映画『白雪姫と鏡の女王』感想

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映画『白雪姫と鏡の女王』

公式サイト:
http://mirrormirror.gaga.ne.jp/

おしゃれなファンタジーラブコメディだった。
ジュリア・ロバーツが魔女役という。それだけでも驚きがある。
何より『ザ・セル』『インモータルズ ―神々の戦い―』のターセム監督であること、そして故・石岡瑛子女史による最後の衣装だ。

興味深いのは、昨今、残酷なイメージが強調されるようになった『白雪姫』をあえてコメディにした事だ。
(今年の6月に公開していた戦う白雪姫の映画『スノー・ホワイト』を見ておけば良かった…比較検討できたのに)
子供でも見れる内容だと思う。

『白雪姫』が母娘の確執、女の闘いの隠喩である事は言わずもがな。
そのおどろおどろしさはコミカルになり、童話の不気味さはユーモアと化していた。
美しさだけでなく、更には王子を巡っての争いになっている。

魔女=女王は古典的な悪どいイメージが払拭され、“ただの我儘な女性”だった。
…心なしか、ゴシップイメージによく合っている。
ジュリア・ロバーツの演じるイメージに“女性の生き方とは”という問題定義をよく垣間見るが、ここでもそれを示唆しているのかも知れない。
美しさを保つためエステに勤しむ姿は、努力する女性ではある。
その秘訣が泥のパックや蜂の毒、不気味な、醜いものから成り立っているという表現が皮肉で面白い。
そしてリリー・コリンズ演じる白雪姫もまた、己を鍛える努力をする。武術に限らず、処世術を。白雪姫に助力する“7人の小人たち”である“7人の小さな盗賊たち”で、彼らから“人を欺く”術を教わる。
2人の努力する女性像は興味深い。

映像面で興味深かったのは、原題でもある"mirror,mirror."(『鏡よ、鏡』)
そう呟きながら女王が鏡の中に入ると、それは湖の水面となる。そこは靄のかかった湖で、真ん中にある粗末な小屋に繋がる。外の世界の豪奢さとは対照的だ。小屋にある鏡は曇っている。美しさ(表面的なもの)に力を注ぎ、内面を磨かない女王そのものであるように解釈できる。
また、7人の盗賊たちがジャンピング・スティルト(西洋竹馬)で現れたり、魔女の刺客が操り人形であったりと、昔の見世物小屋で見たような素朴なものであることが、斬新なグラフィックとの対比ともなり、童心に還るようで心温まる。

落下の王国』にも近い喜劇だ。
ただ、そこに『落下の王国』のような純粋かつ単純に幸福を願う少女はいない。
「やはりこれは白雪姫の物語だった」と鏡が言うように、白雪姫の成長の物語だ。
つまり白雪姫が“魔女”になる。

老婆となった女王は最後の抵抗に白雪姫に毒リンゴを差し出すが、老婆の正体に気付いた白雪姫は、生きるために手に取ったその短剣でリンゴを切り分け、満面の微笑で「お年寄りからどうぞ」と差し出す。

彼女の容赦の無さや直接手をかけないような手口は、以前の彼女からは考えられないような狡賢さでもある。

やはり『白雪姫』の物語はおどろおどろしく、最後の最後で、ターセム監督らしい不気味さが現れる。

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