映画『インモータルズ―神々の戦い―』感想

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『インモータルズ―神々の戦い―』

『インモータルズ―神々の戦い―』公式サイト:
http://immortals.jp/

神話の時代とはかくや、正当な英雄譚だった。
私の中の評価は高い。
物語に何か社会的なメッセージ性がある訳ではない。ただ、独自の物語にしながら神話らしさを損なっていないと思ったためだ。

公開前のチラシを見て、神話体系と異なる事――タイタン族とオリンポス12神との戦いに何故テセウスが絡むのかといぶかしんだ。

しかし作中で神話体系、テセウスのミノタウルス退治がきちんと語られる。
『インモータルズ』には真鍮の雄牛の中に人を入れて蒸殺す処刑具『ファラリスの雄牛』が敵の陣営に表れる。

ファラリスの雄牛

参考:ファラリスの雄牛(ウィキペディア)

そこからも想起させられた。
決定的なのは、敵の放った刺客がミノタウルスを思わせる、雄牛の被り物をしていた。
信仰と人の死が集う地下墓地でそれと対峙するのは相応しいと思う。
以前『インセプション』考察にも書いたが、ミノタウルスはテセウスの闇の面、則ち個人の死や恐怖の象徴でもある。
この対決に勝利する事でテセウスは成長する。
それをきちんと踏まえている。

テセウス個人だけではなく、雄牛との対決はローマ神話にとって重要だ。
元の神話においても、ミノタウルス退治がテセウスの王位継承の試練であり、神話上のローマ建国の基礎となっている。
それは雄牛がローマにとって脅威であった他国の信仰や象徴だったため。

倒さねばならぬ雄牛。
これは他国の侵略の脅威を退けた英雄の物語だ。

そして人の戦いと神々の戦いが直接交差する事は無かった。
ゼウスは頑なに『人の戦いに神々が手を出してはならない』と言う。
だから追い詰められたテセウスを助けるために敵に手を下した軍神アレスに死の制裁を与えた。
デウス・エクス・マキナの否定を徹底し、神々の加護を受けつつも人間が自身の力で歩む事を是とする。
アリストテレスが唱えた伝統だ。

もっとも、蘊蓄抜きに製作陣が豪華で私好みなのだ。ターセム監督(『ザ・セル』『落下の王国』)に、衣裳担当が石岡瑛子女史、製作が『300』という。
言わずもがな、映像の美麗さ、戦闘の雄々しさ…大満足だ。
襲撃を受けた村で戦うシーンは『300』のように横からのアングルになり、敵をたおしながら前進する様子がわかる。だが『300』のように流れるような所作というよりも、コマ割りのような1シーンずつ区切られているような気がした。
これは物語終盤のレリーフとリンクし、壁画や絵画では、古代ギリシャ美術のイメージを意識させる。
伝統的意匠が取り入れられながらも斬新さがあるデザインやどのシーンも舞台や絵画を思わせる。
芸術的娯楽なのだ。
古代の人々は円形劇場で演じられる英雄譚にこんなヴィジョンを見ていたのかも知れない。

とにかく私は大満足だ。

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