映画『ホドロフスキーのDUNE』感想

白黒イラスト素材【シルエットAC】
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ホドロフスキーの『DUNE』
公式サイト:
http://www.uplink.co.jp/dune/

非常に内容が濃い映画だった。
ホドロフスキーの凄さが伝わるが、この映画を撮ったフランク・パヴィッチ監督も凄い。

クオリティが高い企画が用意されたにも関わらず、撮影中止で幻のSF超大作となったホドロフスキーの『DUNE
その姿に迫るドキュメンタリー。
幻のSFを垣間見るだけでなく、クリエイターとしての姿勢、ディレクションのあり方、そして日本宣伝文句に使われている通り、勇気を貰う映画だった。

幻のSF

ドキュメンタリーだが、関係者のインタビューだけではない。
絵コンテが動き、影響を与えた後のSF映画のシーンや、当時の参考動画を交え、ホドロフスキーが本当に作りたかった『DUNE』の姿が見えてくる。想像してしまう。

理想のクリエイター、ディレクション

インターネットも無い時代、ホドロフスキーはあらゆる手段を駆使してイラストレーターや俳優達を集める。
ホドロフスキーの人を見極める感性、人脈、情報による準備の上で、シンクロニシティとも言うべき「引き寄せ術」で彼らに会う。
関係者から語られるその経緯はRPGのようで、それ自体が冒険譚のようだった。
良いものを作るために、情熱を持って進む事は、本来、不可能ではない。

アートとしての映画

何とダリの出演を打診していた!配役は銀河帝国の皇帝。
ホドロフスキー誘い方がダリに合っている。オファーでのやりといのエピソードがシュルレアリスム(魔術的芸術)にぴったりだった。
ギャラの話も面白いが、ダリは燃えるキリンを出したいと言っていたようだ。
それがかなっていたら、ダリの絵を知っている観客はクスっとしてしまっただろう。

「人生の目的(ゴール)とは、自分を魂として昇華させること。
私にとって映画は芸術だ、ビジネスである前にね。」

――ホドロフスキー

宗教・オカルト的なるもの

原作小説には無い、オリジナルのエンディング。それは主人公の死と、それによって人類は目覚めるというものだ。
キリストのような死だ。

「私は預言書を作ろうと考えた。
『DUNE』とは、芸術と絵映画の神の降臨だ。
とても神聖で、自由で、新しい視点から精神を開放させるものを作って、世界中の人々の意識を根本から変えたい。」

――ホドロフスキー

今年来日された際、禅の体験と講義があった。参加してみたかった…
アレハンドロ・ホドロフスキーと禅
http://ecocolo.com/journal/movie/000821.html
「100人坐禅」ホドロフスキー監督による説法、全文掲載
http://www.webdice.jp/dice/detail/4185/

宗教、オカルト、心理学……
人の精神が関わる分野、非日常と認識される領域は、日常と地続きだ。
それら、夢の領域となるものは、現実を、世界を変える。
それらが創造の原動力だ。

後世への影響

映画は撮られず、情熱の塊のようなストーリーボードが残った。
そこに書かれたカメラワークや衣装・キャラクターデザインは、後のSF作品に大きな影響を与える。
スター・ウォーズ』のC3-POの姿に似たものが『DUNE』のコスチュームデザインの中にある、刀剣を使った戦闘、殺陣の描写なども……
ダリの出演を検討し、その縁でダリがH.R.ギーガーを(今年亡くなられた彼…ご冥福をお祈り申し上げます)紹介したという経緯。『DUNE』が頓挫した後、リドリー・スコット監督の『エイリアン』が制作された。その前日譚として2012年公開されたプロメテウスにも、似たヴィジョンが現れる。
主人公の死と人類の覚醒は映画『マトリックス』のネオに通じる。()

そういえば、ディヴィト・リンチ監督の"DUNE(邦題『砂の惑星』)"を、病人のようになりながら観に行ったホドロフスキー。観ていて自分の構想とは似ても似つかぬ、余りの出来の悪さに、次第に元気になったという。「きっとプロデューサーのせいだね」
リンチ本人もそう言っていたようだ。

私もかつてリンチ監督の"DUNE“を観たが、覚えているのはハルコンネンが巨大砂蟲に呑み込まれる、終盤シーンだけだ。

御歳83とは思えぬ頑健さと鋭い眼光、そして溢れている熱意。
インタビュー中の一挙一動、擬音を混ぜた言い回しは臨場感を伴い、聞いている人を惹き付ける。

その姿勢に感化され、私も創作意欲が刺激された。
凄い映画だった。

  1. ネオがマシン・シティのデウス・エクス・マキナと取引し、エージェント・スミスの消去のための入り口となる代わりに、ザイオンへの攻撃をやめさせる。それにより人類は機械との戦争の終結、和平への第一歩を歩みだした。
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