映画『ホビット 竜に奪われた王国』感想
『ホビット 竜に奪われた王国』の試写会に行ってきた。
公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitdesolationofsmaug/
凄く面白かった!
前作よりもアクションが多く、映画として飽きさせない。
映像がテーマパークのアトラクションのようだった。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの壮大なスケールに立ち返っている印象を受けた。
前回の感想で書いた、ギレルモ監督的なものが目立たなく?なった気がする……
3D映画として、奥行き感を存分に発揮していた。
『樽に乗ったる脱出劇』は原作に無い描写でウォータースライダーのような臨場感があった。
しかし原作小説にも忠実で、微笑ましいエピソードもちゃんと描写され、思わず笑ってしまう。
映像面では『アバター』以来の、久しぶりに奥行き感を活かした撮り方をしているのではないだろうか。
『樽に乗ったる脱出劇』ではその奥行きから、水しぶきや川の高低差が3Dでリアリティーを伴っていた。
それとは違い、邪竜スマウグの立体感や炎の吐くシーンは、飛び出す演出を活かしている。そのメリハリが良かった。
何よりスマウグの姿は、映画館のスクリーンで見た方がイメージに合っている。大きさ的に。
スマウグの声をベネディクト・カンバーバッチが演じている事は驚いた。
ドラゴンの声、映画『ドラゴン・ハート』(1996)ではドレイコをショーン・コネリー、映画『アリス・イン・ワンダーランド』のジャバウォッキーをクリストファー・リーが演じている。
老齢の賢者としての演技が目立つ2人。ドラゴンを太古の蛇、古の賢者の象徴と考えると適役だと思う。
その中で紳士的な若い俳優が声を担当している点は意外だった。しかし、良い声だ。
ベネディクト・カンバーバッチはドラマ『シャーロック』のイメージを払拭してしまうように、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』で味のある悪役を演じていた。
物語の面白さは言わずもがな!
原作での若干の矛盾や、『ロード・オブ・ザ・リング』に繋がる事を、独自の描写を加え補っていた。
特に指輪戦争に繋がる、冥王サウロンが力をつけていること、灰色のガンダルフがスマウグとサウロンが手を結べば恐ろしいことになると危惧している点など。
映画オリジナルキャラクター・タウリエルは原作を損ねていなかったので、安心した。
彼女の行く末は気になる。
原作を知っていても、映画ではどの様に物語に関わってくるのか――
物語は後半から硬派になる。原作もそうであったが。
ドワーフ、エルフ、人間の不信や執着、我欲といった暗い情念が渦巻く。
最も、映画前半からその影はちらついていた。
指輪に纏わる形で。
森で指輪を落としたビルボは、探す過程で巨大な蟲に遭遇する。
己の身の危険からつらぬき丸を振るうのではなく、蟲の側にある指輪を取り戻すために振るった。
ビルボは己の指輪に対する執着、暗い衝動に息を飲む。
小説も映画でも『ホビット』では脇役の指輪だが、その効力が『ロード・オブ・ザ・リング』三部作よりも際立っている気がする。身に付けた者の姿が消えるアイテムとしても、欲と執着を増大させるものとしても。
(『ロード・オブ・ザ・リング』では指輪を使うとサウロンにバレてしまうので、使いたい衝動との葛藤が手に汗握るものなのだが)
そして指輪の効力が無くても、あらゆる種族にある暗い情念が、せめぎ合っている。
映画最後のビルボの言葉と、エンドロールに流れる歌は、次回作の戦乱の悲愴を漂わせる。
強大な敵を打ち倒すために、ドワーフ、エルフ、人間たちとホビットがどの様に活躍するか楽しみだ。