映画『GODZILLA 怪獣惑星』感想

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映画『GODZILLA 怪獣惑星』チラシ2
公式サイト:
http://godzilla-anime.com/

!ネタバレあり!

冒頭から人間の汚さ、弱さが描き出される。
口減らしのために、過酷な環境の惑星へ移住する人々――志願した人々だと言うが、その殆どが高齢者――を乗せた移民挺は、降下中に爆破する。

そこから回想に転じても、怪獣に対処できない人類、惑星外への移民船搭乗中にゴジラの襲撃を受け、大勢の人間が死んでゆく描写が続く……
蹂躙され、一瞬で死んでゆく(直接死の描写は無いが)人間たちの中に、主人公・ハルオの両親もいた。

移民船の中では、食糧の不足、新天地を見つけられないこと、飢えと寒さ、人工の狭い空間に長くいることで精神に異常をきたし自殺する人……
船内の行き詰まった感、閉塞感は死に至る病――絶望そのものだった。

それらの打開のため、主人公・ハルオの「ゴジラを斃せる」という提言を受けて、人類は地球へと帰還する。
宇宙船内の時間軸では20年。
地球ではウラシマ効果(※1)も相俟って、2万年の時間が経過していた――

着陸したのは日本のの丹沢付近と思われるが、植生が変化し密林になっていた。
一番感動したのは、“化石化したビル群”
無人になった建築物に苔が生え次第に体積したものが化石化した模様。建築物そのものは朽ちて無くなっても、自然は人間がいたことを忘れていなかった……感慨深い描写だった。

そしてゴジラとの遭遇。

“アニメだからこそ”できるシーンの数々。
小回りの利くバイク?でゴジラの周りを360°廻ったり、機体が大きいため的にされやすい飛行挺描写など。
今までのゴジラシリーズの大半が、メカゴジラに代表される巨大兵器に(ゴジラと)ほぼ同サイズの別怪獣だったのに対し、“人間”がゴジラに立ち向かっている描写は、特撮では表現できない、アニメの利点だと思った。
これはハリウッド版でさえ、表現していないものだと思う。(ちなみにゴジラは人間を食べないからね!)

ゴジラの生態調査はゴジラ討伐に繋がる。
人類の悲願を達成したかに思えたが、“ドォン”という重い音ともに、2万年の時を経た怪獣王――『ゴジラ』シリーズ史上最大の大きさ――が身を起こす。
映画館での音響の効果もあって、“ドォン”という音に驚いた……同時に、それは震災の時の振動や、もしかしたら戦時中を生きた人々には死に直結する爆撃音のイメージに近かったのだと思い至る。

ゴジラが一歩前に踏み出し、尾を回しただけで、調査隊が壊滅する……
映画『GODZILLA 怪獣惑星』チラシ1
1作完結かと思ったら、何と三部作……!
しかも、次作ではメカゴジラまで現れるという。

2万年という月日は、類人猿から現代人が進化した時間に相当。
つまり、生物が進化するのに充分な時間。
調査隊とは別の人影が、作中とエンドロール後にちらりと現れる。
彼女は生き残った人類の末裔だろうか?
あらゆる人種の混血が進んだためか、肌は浅黒い。
言語体系が変化している可能性がある……彼女とコミュニケーションできるのか?


いくつか疑問も残る。
宇宙航行をするうえで、閉鎖的な環境になる以上、枯渇するのが目に見えている。
植物工場(※2)やタンパク質確保のための昆虫食(※3)など、食糧の生産を促す施設の描写が特に無かった。

ならば月軌道上に拠点を置き、怪獣の目を掻い潜りつつ物資調達をしながらゴジラをたおす機会を窺えば良かったのではないか?

流浪の人型異星人・エクシフやビルザルドたちの目的が水と空気のある地球なら、人類は邪魔な先住民……人類が滅び、ゴジラを斃した後に移住しようとした、という穿った見方ができる。

参考:
INVESTIGATION REPORT|アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』OFFICIAL SITE > 映画前史
http://godzilla-anime.com/investigation/

否、彼らは宇宙の流浪の時間が長いから、彼ら基準で人間にもそれが可能だと思っただけなのかもしれない。
しかしエクシフ達の“宇宙信仰”もビルザルド達の“科学技術”も、人間を真に救うものとはならなかった……
それは現実世界の人間も同じか。
ゴジラとパワードスーツの巨大立像


初代『ゴジラ』は終戦後8年、戦争の傷痕を想起・追体験するもので、大人も対象にしたものだった。
しかし高度経済成長期を経てその悲壮感も失せ、戦争を知らぬ世代が増え、次第に子供向けになってゆく……
それをリセットし、原点回帰した『シン・ゴジラ』。
東日本大震災から5年、冷静に受け止められるようになった時期に再び災害を想起させる。
海から川を逆流してくる波、押し流される船や車、果ては家に、瓦礫に押しつぶされた人の姿など……震災以前は想像しえなかったもの、震災を経験したからこその映画表現だった。

今回の『GODZILLA 怪獣惑星』(以下、“アニゴジ”)が再び子供向けへと転じてゆく布石とは思えない……ストーリー原案・脚本が『Fate/Zero』『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄だし。
昭和から平成にかけて戦争の傷痕が薄れてゆく中、破壊神としてのゴジラは時代の風潮に合わせながら変質し、環境問題を絡めた自然の代弁者等を経て守護神のようになった。

アニゴジは自然神寄りの存在だろうか?
本作に登場するゴジラは、金属に極めて酷似した筋繊維の集積体で強い電磁気を発生させる特性を持つ体組織で、歴代最大となる膨大な質量を支えている。地球の生命淘汰(とうた)の果て、植物を起源に持つ超進化生命体として2万年の永き時を生きながらえた存在(※4)
だという。
植物……誰が私に行ったかは忘れたが、「地球の支配者は植物であり、人間の地球温暖化は植物が光合成に必要な二酸化炭素を生み出させるため」という趣旨の言葉。飛躍した話ではあるが。(因みに、私はこれを論拠に地球温暖化を肯定するものではない。)
ただ、人間をはじめ地球上の動く生き物全て、何らかの形で植物の恩恵を賜っていると思うと、‘植物を起源に持つ超進化生命体’という設定に納得がいく。

映画『アバター』では、惑星パンドラの植物は電気的な繋がりをもって動物やナヴィ族とも繋がりを持つことを視覚的に示していたが、私は“アニゴジ”のゴジラは同じ系譜のその別の形に思えた。

ゴジラは人間に死をもたらし、それ故に己を憎む人間に斃される事さえも肯定するような、悟りきったような眼をしていた。あの眼にギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』も思い出した。

人間と目が合った時、ゴジラとは何か意思疎通ができたような……それは人間の欺瞞かも知れない。
その目には、あるいは己の死さえ達観しているゴジラの内面が表現されているような気がした。

  1. 時間の遅れ (Wikipedia 日本語)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/時間の遅れ
  2. 植物工場 (Wikipedia 日本語)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/植物工場(2017/12/16 確認)
  3. 生態学的に見ると、昆虫が食べた植物のエネルギーを体質量(ボディマス)に変換する二次生産の効率は平均40%で、魚類の10%や恒温動物の1 – 3%に比べ非常に優れているため、昆虫類は生態学的および経済的に効率の良い動物性蛋白質の供給源となりうるため。新宇宙食シルクナゲットを食べてみる!- 宇宙実験室 JAXAクラブ
    http://www.jaxaclub.jp/space_lab/08/ (2017/12/16 確認)
  4. アニメ・ゴジラの“顔”が明らかに 『GODZILLA怪獣惑星』予告編解禁 | ORICON NEWS
    https://www.oricon.co.jp/news/2095707/full/ (2017/12/16 確認)
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