映画『ベイマックス"BIG HERO 6"』感想

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映画『ベイマックス』チラシ
面白い映画だった!

日本文化とアメコミのハイブリッドSUGEE――!とか。
Marvelらしさが光ってるとか。
まさかの感涙とか。
Pixar『モンスターズ・インク』とは全然違うエンディングに満足ハート

下記、長めの感想ですが、お目通り頂けると幸い。
!ネタバレ!仄めかしています。

あらゆる物語がそうであるように、子供に向けた成長を促す描写がある。
冒頭のタダシや教授の言葉は、目先の利益や苦労を回避しようとする子供の発想から、学ぶとはどういう事か、興味のあることを活かすこと、悩みながらも実現した時の喜びや“充実感”を諭した。
学生、生徒、児童には励みになる言葉だと思った。

子供向けの中に大人が楽しめる要素がふんだんに盛り込まれている。
敵役「カブキマスク」の人物の背格好が、最も怪しい人物とほぼ近い所にも計算されたものを感じる。
犯人は誰かを、カムフラージュしたようで、推測を促す手法に。
物語の冒頭から、さりげなく重要なキーワードが語られていたり……


しかし、この映画は“心のケア”に重きを置いた映画だった。
アメコミヒーロー風に見せかけて。
そのため、宣伝の仕方が日米で違い、話題になっていた。

参考:まるで別作品!ディズニー新作『ベイマックス』のポスターが日米で違いすぎると話題
http://ciatr.jp/topics/9680

前々回の映画『シュガーラッシュにも通じるものがある。

心のケア

主人公・ヒロの兄・タダシの遺作であるベイマックスは「心とカラダを守る」ケアロボットだ。

物語が進んでいく中でも、ベイマックスは一貫していた。
あくまで“ヒロの心のケア”につきる。
ベイマックスは決して"NO"という言葉を使わなかった。

タダシを死に至らしめた「カブキマスク」の言葉に激昂し、ベイマックスを使って殺そうとするヒロ。

「殺したら(ヒロは)満足しますか?」

ベイマックスの問いは物騒に聞こえるが、否定の言葉で行動を制限するのではなく、ヒロが自分の意思で自分の心に問うように促した。
同時に、ベイマックスはちゃんとヒロの心のケアが優先である事を強く意識させた。

心のケアは復讐劇で満たされる事でも、道徳律を振りかざして他人の行動を制限して正す事ではないのだから。

それは最近気になる、アドラー心理学に通じるものがある。
自己肯定感を養うこととは、子育て“叱る”でも“褒める”でもない“勇気づけ”によって、自分の意志で行動し、自律を促す事だと説いていた。

マンガでやさしくわかるアドラー心理学

そういえばアドラーは子供との接し方が上手で、アドラー心理学は、子育てにも活かせるという。
そしてアドラーとその心理学はアメリカで脚光を浴びたので、そのノウハウを活かす土壌ができているため、こうした表現を抵抗なくアニメーションの中に表現できたのかもしれない。

ベイマックスは「心とカラダを守る」ケアロボットだ。
だが、ベイマックスは本当に人間の心をケアできるのは、同じ“人間”でなければならない事を知っているのではないだろうか?

鬱ぎ込んでいたヒロのために真っ先に大学にいる(故・タダシの友人でもある)友人達に連絡し、そのおかげで彼らの協力を得諸々のて窮地を脱する。

そして時空の狭間に教授の娘が仮死状態にいる事を感知し、ボディを破棄して(身を呈して)救出する。
それにより教授の娘が、傷付いていた教授の心をケアするかも知れないのだ。

「ケアに満足しましたか?」

そうプログラムされているロボット故かも知れないが、愚直なまでに“ヒロの心のケア”を第一に考えている姿に涙が出てきた。

再会――信頼

時空の狭間でヒロ達を救ったロケットパンチの手の内には、タダシの遺産でもあるベイマックスのプログラムが託されていた。
ベイマックスは、ヒロがタダシの設計図を元に再現できる事を念頭に置いていたのだろう。
無言の信頼と行動に感動した。

同時に、両親とタダシとの死別を経験しているヒロへの、やはり心のケアという側面があるのかも知れない。同じ思いをしないようにと……

余談だが、『モンスターズ・インク』とは違う、良い再会の仕方だった。
モンスターズ・インク』のいただけない所は、禁忌を侵して再会する事だ。
ブーに会いたいという動機で、わざわざ破棄された扉を修復して会いに行く。ブーはそれを望んでいるだろうか?
私には嫌悪感があった。

ミヒャエル・エンデが指摘している、ファンタジー論に反していると思うからだ。
ファンタジーと人の住む現実世界には境界があり、接触する事は自由で相互に行き来できるが、人がファンタジーのもの(魔法やその世界の生き物など)を直接持って帰ってはいけないのだ。
持って帰って良いものは、その世界で得た経験だ。
モンスターズ・インク』はそれに反しているように思える。

「ステレオタイプ」「原作キラー」「『機械仕掛けの神』並みのご都合主義な愛の成就」だった、少し前までのディズニーらしからぬ映画だ。
それは時代に合わせての変化であろうし、Marvelなどからノウハウを汲んだ結果だと思う。

Marvel!?

エンドロール後のおまけエピソードが!
そもそも、本編でフレッドの家の壁に掛かっている写真に気が付いたMarvelファンは多いだろう。どう見てもスタン・リー氏にしか見えない(笑)
コミックの実写映画では、Marvelコミックの原作者・スタン・リー氏がカメオ出演する。(ヒッチコックみたい)
それを踏まえた粋な演出に感動。

『ベイマックス』スタン・リー インタビュー映像

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