映画『マルドゥック・スクランブル―排気―』感想

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マルドゥック・スクランブル―燃焼―

公式サイト:
http://m-scramble.jp/

実写映画『天地明察』の原作者によるSF小説のアニメ化作品。
最終章。
素晴らしかった見終わった後は満足だった。
3年かけて観たこの映画。過去の感想を振り返ると歯切れが悪いが、それを払拭してしまう。

映画『マルドゥック・スクランブル -圧縮-』感想

映画『マルドゥック・スクランブル -燃焼-』感想

そこには大人になろうとする少女の成長と、人生の教訓が沢山詰まっていた。

カジノでのブラックジャックの駆け引きの緊張感。
アクションに勢いがあり、娯楽としても楽しめた。
カードの並びを自在に操り、プレイヤーを誘導する術を心得ているディーラー・アシュレイとカードの並びを把握し、挑む主人公・バロット。

「鳥が飛んでいるみたい。」
「尖っている。」
「どんどん尖っていく感じ。」
「だから、丸くしたい。」
「だから、ヒット。」

それはまるで詩のようだった。

共感覚のような表現が小説では理解できなかったが、カードの画像が伴うことで戦局をを表現していることが分かった。ブラックジャックで普通ならバストしそうな局面にあって、全てのカードを把握し、全て“正しい”判断をする。
最少賭けで挑みながら、確信では大金を賭け、勝利を得るバロット。

「一見すると運まかせなこのゲームも本当は知識がものを言う」
アシュレイも語るが、知識と、運と、そして誰かの存在。それが人生においてかけがえのない助力だった。
謙虚な姿勢でそれを受け止めながら、最後は自分の力で、意思で歩む。

大きな勝利を得ながらも、失われたもの達への哀悼とそれを浄化する涙で終幕する物語は、余韻を残す。

題名の『スクランブル』という言葉通り、卵のヴィジョンが象徴的だ。
卵が誕生や復活という肯定的なものから、「心の殻に閉じこもる」というネガティブなものまで、二元の葛藤として現れる。
それは登場人物の名前からも示唆されている。
犯罪に巻き込まれ殺されかけた主人公のバロット(アヒルの雛料理。孵化する前の卵を煮たもの)は、ドクター・イースター(復活祭の卵)らの手によって一命を取り留める。
己の存在理由に苦悩するウフコック(煮え切らない卵)を相棒に、バロットはお互いに支えあいながら、強敵であるボイルド(固ゆで卵)と戦う。
個々のキャラクターの人生観、人格を象徴している。
物語終盤のバロットとボイルドの短い戦闘シーンの中でも、銃撃から身を守る盾が卵状に展開しバロットは緊急避難する。被弾し罅が入る所は盾が持たない恐怖よりも、孵化のようでバロット次の反撃を予感させる肯定的なヴィジョンとなっている。
それは当初、心の殻に閉じ籠らざるを得なかった彼女の克服であり、成長を意識させた。

3(という構成)

ダンテ『神曲』を意識した構成である事はご本人も明言されていらっしゃる。
『マルドゥック・スクランブル 圧縮/燃焼/排気』は『神曲 煉獄篇』だという。そして前日譚『マルドゥック・ベロシティ』(地獄篇)がある。そして後日譚(天国篇)が予定されている。
『マルドゥック・スクランブル』では作中に象徴的な韻を踏んだ行があり、それが『神曲』が三行韻詩であることと関連しているのではないか?と思わせる。

『マルドゥック・スクランブル』が『神曲』のオマージュ作品かは分からない。

ただ、ヴィジョンや物語の中に、常に3つの要素がお互いに響きあう構成は安定し、物語を確固たるものにしている。

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