映画『シュガー・ラッシュ "Wreck-It Ralph"』感想
凄く面白い映画だった!!
大人でも楽しめる映画だった!!
当初、ディズニーアニメ映画であることから侮っていたのだが、観ていたら惹かれ、物語の作り込みに圧倒されてしまった。
もう、スライディング土下座をしなければならない位に。
⊂(゚□゚*⊂⌒`つ≡≡≡
大男と少女という組み合わせに「何これ?『モンスターズ・インク』の二番煎じ?」と思っていたのだが、全然違った。
大まかに言えば、2人の“克服”の物語だった。
“少女(子供)”ヴェネロピからは欠点を活かし“成長”する物語で、“大男(大人)”ラルフからはありのままの自分を肯定し“成熟”する物語だ。
公式サイト:
http://www.disney.co.jp/sugar-rush/
大人の成長
ゲーム『フィックス・イット・フェリックス』の悪役であるラルフは自分が破壊しかできない、“悪”であるが故に愛されない事に苦悩する。
まるで自己啓発セミナーのような場所で悪役である事の悩みを打ち明ける。
この描写がある所で既に大人向けだ。
だが別の場所、ゲーム『シュガー・ラッシュ』で出会った少女・ヴァネロペのために障害物を壊す事で専用の練習コースを“創った”。
この時点でラルフはその行為から自己の発見に至っていないのだが、興味深い描写だった。
ジャパン・(サブ)カルチャー
自己啓発セミナー集っている面々を見ると、悪というより“主人公の敵役”だと沁々思った。
設定がゲームの世界なので、実際のアーケードゲームから多数のカメオ出演(ゲスト出演)するキャラクターがいた。彼らがいる事に懐かしさと可笑しさが込み上げて来る。
日本のゲームメーカーから『スーパーマリオシリーズ』
『ソニックシリーズ』『ストリートファイターシリーズ』など。日本の協賛に喜ぶ。
キャラクターの細かい設定まで活かされていて、ソニックにぶつかるとコインが出てきたり、『メタル・ギア・ソリッド』のエクスクラメーションマークには効果音が着いていた。
バーのシーンでは『ストリートファイター』リュウが一杯煽って退出していった(笑)
海外ゲームの悪役もいたが、著作権か使用権の理由で“サティーン”と名乗っていた。(※)
(恐らく主人公のモデルはモーションからドンキー・コング、マリオのオマージュではないだろうか?)
因みにヴァネロピは日本の若者ファッションからヒントを得ているそうだ。
今までのデ○ズニーらしからぬ映画
今までのデ○ズニーアニメ映画からは異色だった。
私の中でデ○ズニーアニメ映画は「ご都合主義の愛の成就」と「善悪が明確なお子様向け映画」であった。今回の映画はそれを覆す。
大人に向けた描写がある事は前述の通りだ。
そしてもうひとつ、善悪の問題。
主人公が壊し屋という“悪役”である事に苦悩するのだから、“絶対的”な悪はいない。
だが悪意はある。
何故ならゲーム上の“悪役”が悪を為さず、かつてのヒーローがプライドと嫉妬から悪と成すからだ。
もしこれが過去のデ○ズニーアニメ映画なら、悪役が必死に努力して皆を助けてヒーローになり歓迎されそうな所だが、今回はそうならない。
本当に“悪役であるありのままの自分を肯定する”所に行きついた。
物語としても、そこに感動が、心温まるものがあった。
後、ハリウッドなどアメリカ映画が日本のアニメーションやゲームを実写映画化するようになったが、オリジナル要素を加え過ぎて原作ファンを幻滅させるケースが往々にしてあった。
だが『シュガー・ラッシュ』では原作の設定を再現しているので、感動さえ覚える。
『人魚姫』の愛の成就や『アラジンと魔法のランプ』のジンの解放など、デ○ズニーはオリジナル要素を入れ、原作を覆してしまう例が多かった。
『シュガー・ラッシュ』自体は完全オリジナルだが、カメオ出演のキャラクターのオリジナリティを踏襲している事に、今までとの違いを感じる。原作への尊重と原作ファンへのサービス精神だ。
監督は製作のために各ゲーム会社への取材を多く取ったようだった。
そして一言物申す。
日本での配給、吹き替えのみというのが勿体無い。
そもそも原題は"Wreck-It Ralph"(ぶっ壊せ/壊し屋ラルフ)なのに、『シュガー・ラッシュ』という甘口で低年齢限定のような広告展開……既に原作の良さを損ねてしまっている。
だから当初、私の琴線には触れなかった。
何故字幕版が無いのだろう?
『子供に分かりやすく吹き替え版だけにした』というなら、映画の良さを活かせていない。
英語の面白い掛詞が伝わらない。
ラルフが“ありのままの自分(悪役)”を受け入れた事でヒーロー(皆を救う)ではなく“ヴェネロピ個人”を救う事を願っての行動である事が肝心だと思う。
そして字幕の方が英語の勉強になると思う。
字幕は日本語が一番向いている表現方法であろうし……漫画の表現(絵と文言が同じコマにある)にも近しいのだから、そちらの方が良いのではないか?
あ、だが…元の台詞回し、汚い言葉が多かったか……orz
2016/4/23、“サティーン”はこの映画のオリジナルキャラクターと判明。
しかし元ネタとしてのゲームが存在する模様。アーケードゲーム「サタンズホロウ(Satan’s Hollow)」がそうではないか、との事。【シュガー・ラッシュ】あまり日本で言及されていないカメオ出演ゲームキャラ達をピックアップ!
http://ameblo.jp/nejimakikoibumi/entry-12152178216.html(2016/4/23確認。)
ねじむら『【 アニメ映画LOVER ねじまき恋文のヤブレター 】』より。「サタンズホロウ(Satan’s Hollow)」プレイ動画↓
Arcade Game: Satan’s Hollow (1981 Midway)
https://youtu.be/eChgXxuEYJY(2016/4/23確認。)