映画『宇宙戦争』感想

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 上波初放送だった『宇宙戦争』
吹き替えで観るのが嫌だったので、DVDで。
これもお気に入り映画の1つ。

ネタバレ有り。
時期的に不要とは思いますが。断っておきます。

この映画の“描写”が好き。
随所に“聖書”のモティーフが現れる。
例えば、この物語における事件の発端、宇宙人の兵器“トライポッド”が地中から現れるシーンでは、教会が砕かれる。
終末思想的ニュアンス。神の裁きというよりは、神や信仰を否定するイメージか…
この教会のシーン、旧作『宇宙戦争』(ジョージ・バル版)を踏襲しているようです。

スピルバーグ監督の作品には“聖書”のモティーフがよく表れる。『E.T.』の指と指が接触するシーンはミケランジェロ《アダムの創造》へのオマージュであるし、この作品の後、『トランスフォーマー』でも、讃美歌の引用を使って宇宙(そら)から仲間の来訪を告げるシーンがあった。

それ以外にも“人間の行動描写”がリアルであるし、スピルバーグ監督は凄い。
言うまでも無いか。

主人公は一般人。
武器の扱いに長けている軍人でも、分析や対抗するための知識を持つ学者でも、英雄となり得る希望溢れる有能な青年でも無い。
一人の男が、子供逹を“守る”ために逃げ回る。“立ち向かう”では無く。

よくあるSFパニック映画の“地球侵略に来た宇宙人に立ち向かうある人物の物語”では無い。これは何の情報も持っていない、一般人の視点からの物語。その視点が非常に興味深い。

『ミッションインポッシブル』等、トム・クルーズが今までの役のイメージからかけ離れていたので、公開当時それも話題となっていた。

そして人間逹の行動。
強大な敵から、死から逃れるために、我先にと逃げ惑う。逃走のために同じ人間同士殺し合う。
やはり人間の敵は、同じ人間なのか…
グロテスクなまでに現実的な行動描写。

その後に続く、止まる事は無い燃える列車、灰になった人々の衣服が舞い散る森――死の描写。
不気味であるはずが、酷く幻想的な描写でもある。

血の畑

主人公逹が地下室に潜伏し、宇宙人逹の行動を観察する。
それはいわば開拓――
人間を肥料にした農場作成だった。
外は地平線まで続く血の畑。流れる赤い川。

そのとき、イエズスを裏切ったユダは、イエズスに対する判決を知って後悔し、銀貨三十枚を大祭司や、長老たちに返して、「わたしは罪のない人の血を売って、罪を犯しました」と言った。すると彼らは、「われわれの知ったことではない。自分で始末するがよい」と言った。そこで、ユダは銀貨を聖所に投げ込んで去り、首をくくって死んでしまった。大祭司たちはその銀貨を拾いあげて、「これは血の代金だから、神殿の浄財に加えるわけにはいかない」と言い、協議のうえ、その金で「陶器師の畑」を買い、身寄りのない者のための墓地とした。そのために、この畑は今日まで「血の畑」と呼ばれている。

(マタイによる福音27:3-10)

「結末が呆気なく、つまらない」という声もありましたが、私は肯定的に捉えている。
結局、地球を救ったのは人類の兵器、技術や知識などでは無く、地球の生命のサイクルだった。

人類を観察し続けていた宇宙人がおそらく気付かず、人類も普段関心を払わなかった、微生物に。
免疫が無かったために死に絶えた。

人間の叡智など、自然の摂理の中の、僅かな部分に過ぎない。
そんな事を言わんとしているのではないだろうか。
普段、それらの中にいながら、それ故に気付かない。
もしこれがアメリカ軍の戦略や原爆をはじめとする大量破壊兵器による、人の手による勝利ならば、それは『インディペンデンス・デイ/ID4』と同じ筋書きになってしまう。
そもそも人類はそんな“強く”ない。

“この世に神が創りたもうた…”
人の目に見透せないサイクル。まさに“神の見えざる手”が作用している世界。
複雑に絡みあっていて、根源は最早解らない。それこそ“神”という存在がいるのではないかと思う程に。
世界の事象が現象に過ぎないなら、有り得ない話だと思う。

大いに楽しませてくれる、考えさせられる映画だ。

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