ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展
終わってしまった展覧会だが…備忘録も兼ねて書いておく。
公式サイト:
http://www.boston-japonisme.jp/
東京・世田谷美術館にて。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
日本で美術史を学んでいると、おそらく避けて通れない(笑)ジャポニズム。
大学の授業では日本美術と西洋美術の図版を比較検討することがあったが、今まで特定の美術館のコレクション内から、展覧会で比較検討したというのは無かったかも知れない。
パリ万博などを通して、欧州に紹介された日本美術。
日本美術をそのまま取り入れたものをジャポネズリー(日本趣味)と言い、構図やモティーフを西洋美術の様式に取り入れたものをジャポニズムと言う。
この展覧会を通して、ジャポニズムが目新らしさ、物珍しさからのブームではなく、あの時代の欧州のジレンマを日本趣味が解消する価値観を持っていたと思った。
「芸術は語り尽くされた」と言われていた西洋美術。
時代の変革に見合った新しいものを探していたはず。
産業革命によってより自然と切り離されてしまった都市生活、女性も教養を深めるようになり燻り始めた女性の社会進出――
自然のモティーフや女性の日常生活(浮世絵の殆どは芸者の私生活描写なので、一般女性とは少し異なる気がする)を美しく表現した日本美術に、衝撃を受けたのではないだろうか。
喜多川歌麿《母子図 たらい遊》とそれにインスパイアされたというメアリー・スティーブンソン・カサット《湯浴み》
欧州には聖母子像はある。それは教義的なものが色濃く、理想化されたものだが、こうした日常の風景での母子関係への着目とありのままの描写は斬新だったようだ。
母子関係は聖母子像にあるような絆、その2人だけの閉鎖されたものになっていない。子供は母そっちのけで遊ぼうとしている。
http://www.boston-japonisme.jp/category/letter/
極彩色を取り戻した《ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)》
寒色の背景に赤が鮮やかだ。
金糸のつややかさ、武者のアップリケの見事さなどに惹かれる。
背景の団扇に眼が行ってしまうが、カミーユが纏っている打掛についての研究がキャプションにあった。
それによると、この打掛は謡曲『紅葉狩』をモティーフにしたものではないか、との事だった。
美女に化けた鬼を武士が退治する物語だそうだ。
参考:演目事典 紅葉狩(もみじがり)
http://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_014.html
また、歌舞伎の衣装などで、主人公のアップリケなどは付けないところから、花魁道中の衣装との事だった。
この絵はその10年前に制作された《緑衣の女》と対になる作品だそうだ。
参考:緑衣の女性(カミーユの肖像
http://www.salvastyle.com/menu_impressionism/monet_verte.html
並べて見ると、洋の東西、明暗の対比がよく分かる。
ジスベール・コンバズ〈四大元素〉より《空気》《水》《水》《火》
色と形で意匠化された4大元素はお洒落だった。《水》の波は北斎《富嶽三十六景》を思い出さずにはいられない。
火が(プロメテウスのエピソードにありそうな太陽などではなく)火山噴火なのが面白いと思った。
《空気》の意匠の蝶はチャームグッズになっていたので、即購入。
洋の東西を比較しながら、それぞれの持ち味であったり、日本美術を再確認する展覧会だった。
ジャポネズリー以外にシノワズリー(中国趣味)という言葉があったのだが、欧州の人々がそれを分けて考えていたのか、異国趣味として一緒くたにしていたのかは分からなかった。