MASKS An exhibition curated by Kult

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:展覧会

MASKS An exhibition curated by Kult
シンガポールの芸術集団"Kult"(カルト)による、日本初展覧会。

公式サイト:
http://www.diesel.co.jp/art/masks/(日本語)

http://www.diesel.co.jp/art/en/masks/(Engrish)

渋谷・DIESEL ART GALLERYにて。
~2016/11/11まで。

シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン、台湾、韓国、日本の7カ国から、異なる背景を持って活動するアーティストが結集。ストリートアート、立体作品、イラストレーション、工芸など様々な分野の“MASK”作品が展示されてる。

「仮面は夜の門番である」といったのはマンディアルグ(ピエール・ド、1909~91)である。エロスの闇への導き手という意味でいったのであるが、カーニヴァルの極彩色の仮面にこの言葉はふさわしい。

(注釈)

仮面が「隠す」と同時に「顕わす」ことを、「引く」と同時に「攻撃する」ことをよく示す例である。

河村錠一郎『世紀末美術の楽しみ方』(p.82)

私は仮面をカンヴァス(媒体/メディア)として、自己表現することについて考えることが多かった。
しかし、仮面を被写体とする見方をした展覧会は初めてかも知れない。

それは一種の身体論だと思う。
作品を観ていると、目、耳、鼻、口といったパーツを意識させ、局部強調による解剖学的なイメージと性的なニュアンス(これがアートの原動力、エロスでもある)がある。

仮面そのものではなく、アジア的な仮面デザインから“仮面が意識させるもの”を表現した作品群。
三者三様の表現を見て私が思ったことは、これらはアーティストの内にある「装う自己」と「本質的な自己」が織りなす弁証法なのかも知れない、という事だった。

以下、気になった作品についての感想。


MASKS An exhibition curated by Kult / front

kittozutto “Within"

広告にも用いられている作品。
生身の皮膚が仮面という反転した状態よりも、羽で覆われた(出来ている)顔という斬新な状態に魅かれる。
“普段装っている自分”を脱ぐと、美しい羽(本来の自分)が隠されている――

プリントしたものに更に手書きで手を加えている作品は、印刷物の平面的な軽さに手書きによる力強さが加わっている。
おそらく目のあたりではなかろうか。それが作品に不思議な眼力を与えている。

孔雀を思わせる黒光りする羽が神秘的で、こちらを真っ直ぐ射貫く様な眼差しは、見ている者の心まで見透かされているようにも思った。 「私の本質はこれである。ではお前の本質は何か?」と問われている。

“The Temple Of Voynich"

ギャラリースペースの最奥部に掛けられた巨大な切り絵。
額装されている訳ではなく、切り抜かれた黑い紙がそのまま釣り下がっていた……!
そのため、背後の壁に影ができていたり、立体感・奥行きを感じさせる作品だった。

現在も解読不明な奇書・ヴォイニッチ手稿(※1)を思い出させるタイトルと、“秘密結社”を連想させる意匠が神秘的な雰囲気を強める。

構図の向かって左上にある、連続する仮面の一群が力強く惹き込まれる。
ちょっと某ゲームの追加コンテンツのプレイ画面を思い出してしまったり……(※2)

Mojoko

黑いアンティークの鏡の中に描かれた、こちらを見つめる“眼”。
周りはジャングルの動植物(とよく見ると漢字やディズ○ーアニメっぽい動物にエロティックな美女など)に覆われている。

顔を見るための鏡が絵に覆われているようなものなので、覗き込んだものはやはり“覆われて”しまう。仮面のようになっている。

また、鏡がアンティークという事もあって、日本的な価値観で言えば付喪神、あるいは“何か”が宿っているホラーっぽい発想もしてしまう……
映画『Oculusのように。
MASKS An exhibition curated by Kult / side

立川玲音奈 / リトゥンアフターワーズ《Bird

一番、「仮面」"MASK"的な作品だったかもしれない。実際に顔を覆うものなので。

カラフルな風船やプラスチック?など、少女趣味的な手芸要素で構成された、鳥の頭。

縮れた風船は、イソギンチャクなどの海の生物の形状を彷彿とさせた。ちょっとした不気味さに、アルチンボルドの肖像画を連想する。

服飾ブランド・リトゥンアフターワーズの2016年春夏コレクションのファッションショーに使用されたとの事。


身体論、と前述したが、この展覧会の主旨となっている文化的な面――それは伝統的なものというより、今を生きる私たちのポップカルチャー寄り――を意識せずにもいられない。
特にサブカルチャー的な匂いを強く感じるのは気のせいだろうか?
セーラームーンや楳図かずおなどのホラー漫画に影響された作品もあったためか……
極彩色の色彩に、東京ではネオン街のイメージに繋がるためも、あるかも知れない。

強い色彩やサブカルチャーと仮面に何を見れば良いのだろうか?
変身願望、自己の存在を証明したい叫び……
アートにある強烈なエネルギーに、只々、圧倒される。

KULT Offical Website
http://www.kultmagazine.com.sg/ (2016/8/28確認)

KULT MAGAZINE
http://www.kultmagazine.it/online/ (2016/8/28確認)

  1.  Voynich Manuscript (English) (2016/8/28確認)
    http://beinecke.library.yale.edu/collections/highlights/voynich-manuscript
  2.  『NieR』の有料ダウンロードコンテンツが配信開始!
    http://www.famitsu.com/game/news/1235038_1124.html (2016/8/28確認)
    新コスチュームに変えると、なんと魔法弾が実験兵器7号の顔に!!
    http://www.famitsu.com/image/8427/Zk9k5n975v3u2Ws3Puh8S8KvAW4lm959.html (2016/8/28確認)
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