映画『ハーブ& ドロシー アートの森の小さな巨人』感想

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映画『HARB & DOROTHY ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』公式サイト
http://www.herbanddorothy.com/jp/

“郵便配達員と図書館司書の夫婦が集めた現代アートが世界屈指のコレクションに!!”
You don’t have to be a Rockefeller to collect art.

私もアートをコレクションする事に関心があるので、興味を持った。
アートコレクターが財がある人の趣味とという認識の中で、寧ろ低所得者に当たるハーバート・ヴォーゲル、ドロシー・ヴォーゲル夫妻が40年かけて美術館に寄贈できる質の在るコレクションを築いたというのが、やはり最初の驚きだった。

ヴォーゲル夫妻がアートをコレクションする基準は2つ。
1.自分達のお給料で買える値段であること。
2.1LDKのアパートに収まるサイズであること。

今までは断ってきたそうだが、1LDKのアパートに「楊枝1本の隙もない」程のコレクションとなり、NYの国立美術館ナショナルギャラリーに寄贈する事となった。
その経過とヴォーゲル夫妻の回想録、そしてコレクションの一部を紹介しながらアーティストにインタビューする盛り沢山の形式のドキュメンタリー映画。

夫妻のコレクションには、アーティストの“過程”が見える所に価値がある。
収集したものは60’~70’年代のミニマルアート、コンセプチュアルアートが中心。

【ミニマル・アート】
ミニマルとは「最小の」という意味。美術の世界では、アクション・ペインティングの反動として1960年代のアメリカで生まれた。画面から可能な限り手技の痕跡を取り去り、均質で単純な形態のものを反復する。徹底した画面からの空間の排除は、絵画から伝統的価値はおろか造形性という問題まで排除して、物質の次元まで追いやろうとする試みだった。ミニマルの考え方は、音楽にも建築にも様々なところで展開され、その無機的な様相がある種現代の気分と一致したところがあった。

【コンセプチュアル・アート】
作品の物質的側面よりも観念的側面を重視する傾向の作品を指す。日本では、長い間美術は深い思索や思考とはあまり縁の無いものとして扱われてきたが、西洋美術は、往々にして哲学や神学なと、さまざまな思索と深い関係を持って存在してきた。したがって、その時代のもっとも先鋭的な思想と結びついて表現の形が模索されるということは、ごく普通のことで、特に20世紀に入ってからはさまざまな思想と共同作業をしてきた。極端な場合は、一見して美術とは思えないような数字や記号の羅列の形でしかものとしては存在しない表現もある

(横浜美術学院監修『美術用語辞典』より
http://www.e-s-w.com/hamabi/dictionary/index.html)

有名画家の完成された1点を収集するだけではないコレクションの仕方。
それは美術の歴史やその時代がわかるコレクションだった。

映画では夫妻のインタビューや鑑賞する姿勢からミニマルアート、コンセプチュアルアートの魅力も学べる――寧ろ感覚で知るように感じた。
ヴォーゲル夫妻の審美眼が垣間見れる。それは理屈ではなく、やはり感性だった。そして夫妻が何処に魅力を感じられているのか、映像を通しても伝わってきた。

また、寄贈するにあたり夫妻は転売されない事を条件とし、寄贈していた。
美術館にある“コレクション”も場合によっては散在してしまうこともある。それをしない事を把握した上で同意したようだ。
その姿勢も興味深かった。

映画としても、とても楽しい作品だった。
モダンアートの講義にはならず、そこに夫妻の純粋なまでのアートへの情熱や仲睦まじい姿に魅かれてしまう。心温まるものだった。

この日、佐々木芽生監督のトークショーがあった。
15分程であったのだが、内容は撮影の資金面での苦労話と口コミによるロングランへの感謝、そして日本における宣伝カラーのピンクについてだった。
PANTONE192(パンフレットのピンクの色?)という。監督は反対したそうだがデザイナーはこれを押し通したそう。
結果としては、このピンクに惹かれ、映画を見に来る人もいらっしゃったとの事だった。

佐々木監督と少しお話しが出来たのだが、現在ヴォーゲル夫妻は現在、積極的にアートをコレクションされていらっしゃらないそう。
しかし4年の撮影から、現在の生活とインタビューにその積極的な頃のお姿を交え、その情熱的な活動をお伝え出来るようにしたとの事だった。
現在、この映画の続編となるヴォーゲル夫妻のコレクション展とそのプロジェクトを追った映画を制作していらっしゃるそうだ。
早くも楽しみである。

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