ちきり伊勢屋
落語を聞いてきました。
2009年の夏に聞きに行ったので、1年半ぶりでしょうか。
【過去日記】『怪談 乳房榎』
笑門来「福」の会/遊興亭福し満 独演会
『ちきり伊勢屋』
ポレポレ東中野にて。
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
あらすじ、詳細は下記(他力…)
参考:第103話落語「ちきり伊勢屋」
http://ginjo.fc2web.com/103tikiri_iseya/tikiriiseya.htm
良く当たると評判の占い師に死期を告げられたちきり伊勢屋の若旦那・伝次郎が積善を積めば長生き出来る可能性があるというので全財産を施しに使い、道楽を極めてゆく――そして結局、予言された日に死なず、一文無しになってから、さらに転機が訪れる…
困った時の神頼み、あるいは迷った時の占い師――
悩みを聞いてもらえる事や当たる事で人は安心して、心が軽くなる。
占い師や神託が、現代で言うカウンセリングの役割を担っていた事は言わずもがな。
それに翻弄される主人公・伝次郎の滑稽さも面白いが、主人公を助けるものが人情――施しをした人であったり、長い付き合いの人々である所が心温まる。
結局、伝次郎を救ったのは親の遺産でも神でもなく、人の絆だった。
震災の後であるためか、未来への不安と人々の絆と笑いと言うものに、素直に楽しめた気がする。
落語を聞いて思うのは、その情景画浮ぶ言葉。
夜に満月の光を映し白く光る隅田川、浅草・吉原が不夜城のように夜闇に浮ぶ対比。
そして掛詞の数々。
「ちきり」には二つの意味がある。一つは、米俵のほうな重いものを秤る際に用いる大きな棹秤を「ちきり」あるいは「ちき秤(ちぎばかり)」といった。これはちぎ秤についている紐に天秤棒などを通して、二人で担いで秤っていた。もう一つの意味は、木材や石をつなぎ合せる鎹(かすがい)の代用につかう「ちきり」で、両端が広く、真ん中がくびれた小鼓を横から見たような形のものを言う。「ちきり」は質屋・両替屋の屋号に使われることが多く、「?[数字の五を図案化したものという]で示されるため、本来は「ちきり」に由来するものだが、それに両替屋と関係の深い「ちぎ秤」を掛けたものと思われる。また、「ちきり」は訛って「ちぎり」とも言われた。
江戸時代には質・両替など金融機関の商売には伊勢出身者が多かった。「質両替」とは質屋と両替屋を兼ねた商家で、当時は大資産家の代名詞のようなものであった。飯島友治編・筑摩書房版『古典落語』第二期第五巻より引用
そうしたものが、落語の魅力だろう。
「ちきり」の掛詞が筋書きで質両替屋から籠屋――担ぐ秤と担ぐ籠。
落語って面白い。