アンダルシアのワイン――映画『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』上映記念特別ワインセミナー

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伝説的フラメンコギタリストの映画『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト公開に先立ち行われた、ワインセミナーに行った。

レストランテ スペインクラブ銀座にて。

パコ・デ・ルシアにちなんで、アンダルシア地方のシェリー酒と赤ワイン、タパス(小皿料理)が振る舞われた。

映画を観る前の予備知識として、また、アルコール知識素人の私には全てが新鮮だったので、備忘録として。


パコ・デ・ルシアについて

会場ではパコ・デ・ルシアの曲が流れ、映画の予告編と本編の一部を上映。
パコ・デ・ルシアの経歴と彼の偉業を紹介。

異なる音楽――ジャズバンドとのセッション、即興で「二筋の川」を作曲するなど、当時のフラメンコ音楽の常識を打ち破った。

“SEXTET(6重唱)"を初めて行い、"Cajon Peruano(箱/南アフリカの楽器)"を持ち込んだ。

元々、フラメンコはカンテ(歌)、トーケ(ギター)、バイレ(踊り手)の三位一体で成すもの(これらに優劣は無い)で、その中からギターのみ独立するという事も異例だった。

パコは元々リズム感が優れており、7歳からギターを弾きはじめ、20歳でデビューしたという。
そのリズム感は天賦の才だと思う。
アンダルシアでは身近にフラメンコをする環境――パティオ(裏庭の意。スペイン建築では中庭のような場所)が解放され人々が集まり、そこで踊る習慣があるので、自然と培われる。

それにちなんで、アンダルシアの文化――食を通じて触れるという企画だった。

ワインセミナー

アンダルシアはワイン向きのブドウ作りに適した石灰質の白い大地らしい。

コニャックなどを作る土地と同じ、硫化カルシウムを含んだ土だという。

私が観光で行ったのがバルセロナやマドリードだったので、スペインは赤い大地のイメージになっていた。

白い大地を想像したことがなかったので、改めねば……。

そのアンダルシアを代表するワイン――シェリー酒は、醸造過程でアルコールを足してアルコール度数を高めた(酒精強化)ワイン。
三大酒精強化ワインのひとつだそう。

参考:シェリー (ワイン)(Wikipedia) 

アンダルシア州へレスの限定ワイン。
熟成は3年以上かけるが、シェリー酒はアルコールを混ぜるのでヴィンテージはないとのこと。開封したらすぐ飲むことがお薦めだそう。

シェリー酒はカクテルにも使いやすく、アドニスなどに使われている。

  • Hidalgo Fino イダルゴ・フィノ
  • Hidalgo Fino イダルゴ・フィノ

    すっきりとした辛口のシェリー。輝く麦わら色で繊細な香りと味わいがあります。
    シャープでデリケートなアーモンドのような香り、辛口で軽い口当たり。キリリと冷やして食前酒に、また魚介類と合わせたり、風味づけにスープに少し落としてもグッド!

食前酒としていただいたものは、飲みやすかった。
シェリー酒を飲む際に使う「コピータ」という小さな脚つきグラスで頂いた。

料理はオリーブ、生ハム、何でも合うとの事。

  • MARQUES DE RODIL PALO CORTADO マルケス・デ・ロディル・パロ・コルタド
  • MARQUES DE RODIL PALO CORTADO マルケス・デ・ロディル・パロ・コルタド

    「パロ・コルタド」とは、切られた棒線という意味。樽に付けるチョークの印から来ています。
    アモンティリャードのような繊細で優雅な香りとオロロソのような構成や豊かさが特徴と言われている非常に稀なシェリーです。

VENECIANDOOR

この時、ベネンシアドール()の実演があった。

長い柄杓を使って、シェリー酒をグラスに注ぐ。

ベネンシア(“VENECIA")とは契約(“AVENECIA")の意。元は酒樽からシェリー酒を取り出して、その場で味見をする(そして売買の契約をする)ことから由来しているそうだ。
今はパフォーマンスとして行われている。

資料映像では、実演がうまくできると"¡Ole!"の掛け声が上がっていた。

アンダルシアの人々は農作業の際に馬を活用したそうで、ベネンシアドールの衣装はその頃の乗馬服が元。女性も馬に乗ったそうで、ファルダ(スカート)は裾が広がり、馬に跨がっても脚がかくれると言っていた。
また、馬から降りたときファルダの裾が邪魔にならないように、背中の腰辺りにファルダを持ち上げるためのフックがついている(機能的!)そうだ。

ちなみにジャケットはボデガ(酒蔵)毎に違う色だそう。

腰に巻いているのは、フラメンコでも身につけるシージョ(ショール)?
伺ってみたが、私の発音が悪いためか、別の名称があるのか、伝わらなかった……
民族衣装で、腰に巻いたり肩にかけたりするだけでなく、頭を覆ったりすると教えてくれた。

ベネンシアドールで入れてもらったマルケス・デ・ロディル・パロ・コルタドは、1つ目のシェリー酒とはまた味が異なる……花の香りが増している気がする。
ワインでデカンタを使うと空気が入ることで香りが華やかになるという話を聞いたことがある。ベネンシアでもそれが起こったのかもしれない。

パロ・コルタドは醸造中に偶然出来上がるもの、意図して造れるものでは無いという。
輝きのあるマカボニー色が綺麗なシェリー酒だった。

  • Taberner Tinto タベルネール・ティント
  • Taberner Tinto タベルネール・ティント

    ワイナリー創業者でありオーナーのタベルネール氏の名前を冠したワイン。畑の最上の区画にできた、完熟した健全なブドウのみを手摘み収穫。醸造も温度管理され、アリエ産のバリックで移し替えを行いながら12ヶ月の樽熟成。色合いは深い紫。アロマは熟したブラックベリー、モカ、カンゾウ、コショウ、かすかなスミレ。味わいはシルキーかつスパイシー、ダークフルーツ、オーク、モカ等のニュアンスが渾然一体となり、素晴らしいバランスを保つ。南スペインの特徴がよく表れたワイン。

3つ目にスペインの珍しい赤ワイン。洗練された馬のラベルデザインも格好いい。

濃厚で、味わい深いワインだった。

  • Hidalgo Pedro Ximenez イダルゴ・ペドロ・ヒメネス
  • Hidalgo Pedro Ximenez イダルゴ・ペドロ・ヒメネス

    ペドロ・ヒメネスから造られる極甘口のワイン。糖分が凝縮するように、葡萄は天日で干されます。これにより、非常に奄美の強いモストが得られます。不透明くらい暗い色で、干し葡萄を思わせる味わいやイースト香を持っています。非常に濃厚で、ビロードのような滑らかな口当たりです。

最後に頂いたのは、はちみつが入った甘いシェリー酒。
飲みやすくて、うっかり沢山飲んでしまいそうだった。
会場では「コーヒーに入れると合うかもしれない」という意見が上がった。

ちなみにタパスはオリーブ、塩漬けヒマワリ、チーズ、干し葡萄、イベリコ豚の生ハムなどを頂いた。

どれも美味しかった……!
ペドロ・ヒメネスで使われるものと同じ干し葡萄を使ったアイスも出てきた。アイスでもシェリー酒と同じ香りがした。


ワインの中でもシェリー酒に注目して試飲したのは初めてだった。
味も香りも、奥深く多様な味わいがあることを気づかされ、とても楽しかった。

会場はタブラオ(フラメンコ生演奏ステージ付きバル)ではなかったので、フラメンコやギターの演奏などは無かったのだが、美味しいタパスに舌鼓を打ちながら歓談するのは、バルらしくてよかった。

若干、パコ・デ・ルシアから離れている気はするが……
会場で進行役の方が、「パコ・デ・ルシアの好きな銘柄を調べておけばよかった……!」と仄めかしていた。

シェリー酒とワインを楽しみながら、今度公開する映画を楽しみにしている、私。

シェリー酒小話

バルで女性が「シェリーを飲みたい」=愛の告白、「一緒に夜を過ごしてもいい」という意味だそう。

  1. ワインの解説、ボトル写真は、セミナー資料およびスペインクラブオンラインショップ( http://shop.spainclub.jp/ )より引用。
  2. ベネンシアドール ( http://www.sherry-japan.com/knowledge9.html )
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