映画『ジュラシック・ワールド』感想
公式サイト: http://www.jurassicworld.jp/
一言で言えば恐竜映画ではなく怪獣映画だった。
ネタバレ含めての箇条書き感想
- サファリパークというより、テーマパーク。どうみてもディ○ニーランドにしか見えない。
- 恐竜のトレーナーがいる!サファリパークらしさなのか……
- 細かいディテールに『ジュラシック・パーク』の懐かしいアイテムや場所がある。ファンにはたまらないサービス。
- セル画アニメーションっぽかった2Dの「Mr.DNA」が3Dアニメーションになってる!
- ハイテクが進んで立体映像は言わずもがな、巨大な建造物(観客席)が動くギミック。
- 遺伝子操作でハイブリッドして作った新種の恐竜(インドミナス・レックス)って……それは恐竜なのか?(怪獣じゃないですか!!)
- イカの遺伝子で得た擬態能力って……カメレオンではダメだったのか?
- CEOによるヘリのフラフラ操縦で奇跡は起こらなかった。リアル。
- 翼竜の鳥かごが壊れて、びっくりして翼竜達が外に出たのはわかるけど、人を襲ったのは何故?ヒッチコックへのオマージュ?
- 力いっぱい叫ぶ放映禁止用語に乾杯(これ、英語圏では“ピ――ッ”って音声が入ったのかしら?)
- インドミナスがラプター達と同じ遺伝子を持っているからって…そんなやすやすとラプターを子分にできるのか?冒頭でインドミナスが社会性に欠けるって言っていたのに……(『ジュラシック・パーク』ではラプター系は社会性高い設定ではなかったか?)
- 大トリはやっぱりティラノサウルス・レックス(T-REX)。恐竜王。
- まさかのヴェロキラプトルが共闘。(人間とT-REX)
- 水槽に落ちなかった‼
SF、ハイテクは映画の醍醐味だが、全面に押し出し過ぎていてリアリティーに欠ける印象がした。(映画の醍醐味はフィクションをそれとは感じさせない事だと思う)
『ジュラシック・パーク』における、未来技術で太古に戻ったようなタイムスリップ感や、サバイバルが無い。
往年のテーマ曲と共に悠々と歩く恐竜たちや密林の緑の深さに、雄大な自然への畏敬の念を抱かせる演出も感じられなかった。
あと、人物描写への不満。
『ジュラシック・パーク』では人物の関係や葛藤が、短く簡潔かつ自然に語られていたが、『ジュラシック・ワールド』ではステージのような大袈裟感や、行動の整合性に違和感を感じるものがあった。
『ロスト・ワールド』『ジュラシックパークⅢ』で人物の葛藤は複数描かれ、使い古されたということか……『ジュラシック・ワールド』の人間関係は、過去3作の人間関係をトレースしたようにも思える。
そして草食恐竜が全く活躍してなかった!!
『ロスト・ワールド』でステゴサウルスが子供を守ろうとして尾を振り回していたし、石頭のパキケファロサウルスが車の扉に頭突きしていたので、もう他に語る必要は無いということなのか……トリケラトプスの雄姿を見たことが無いような……
『ジュラシック・パーク』は人間の技術・ハイテクが自然をコントロールしようとして、それが脆くも崩れ去る様を描いていた。原因が人為的なものであったとしても。
この映画は自然というよりも、もっと人為的な何か――太古の恐竜を蘇らせた地点でそれは自然に反しているが、もはや恐竜とも呼べない怪獣(映画の中では客寄せの話題づくりに人工的に作り上げたもの)の狂気は何なのだろうか?それは自然から逸脱した人間の狂気だろうか?
恐竜?怪獣?
しかし、この映画は紛れも無く『ジュラシック・パーク』の続編なのだろう。
『ジュラシック・ワールド』劇中で、かつての“ジュラシック・パーク”の放置されたエントランスが現れる。
崩れたままのT-REXの骨格標本や壁に描かれたヴェロキラプトルの絵に懐かしさがこみ上げてきた。
雨ざらし、野ざらしにされ落ち葉や泥に埋もれているそれが、何一つ変わっていない事を暗示させる。
旧作の恐竜たちもまた、遺伝子操作――欠損している部分を現代と爬虫類・両生類のDNAで補っているという設定だった。
その点で(フィクションの中でも)元々、本物の恐竜ではなかった。
では、怪獣だろうか?
『ジュラシック・パーク』でT-REXがトイレに逃げ込んだ人物を襲うシーンは、特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼンの映画『原子怪獣現る』で怪獣が人物をくわえて左右に振るモーションに影響を受けているという指摘(※1)があった。(どちらもワニが獲物を獲る時の動きにピントを得ていると思うけど)
それを踏まえると、『ジュラシック・パーク』は怪獣映画としての様相が強かったのだろう。
実際、『ジュラシック・パーク』に現れたディロフォサウルスがエリマキ付きの毒を吐く設定はフィクションだ。
化石にその様な形跡は無いという。それが立体映像となって主人公らを追いかけてきたラプターの足止めをする描写には思わずクスッとしてしまった。
余談だが、映画公開から10年後、毒を吐く恐竜がいたのではないかという仮説が発表された。
『毒を持つ恐竜発見、狩猟は毒ヘビ流?(NATIONAL GIOGRAPHIC 日本語版)』
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2088/
その後の研究の進捗を私は知らない……
話を戻すと、そこにリアリティを与えたのが古生物学者のジョン・R・ホーナー博士(※2)だった。
ヴェロキラプトルの舌を蛇みたいに二股舌で閉じた口からチロチロと出すようにしようと考えていた制作サイドを止めたという……
恐竜が蛇とトカゲよりも、ワニ、亀や鳥に近いとすれば、蛇、トカゲのような二股舌ではなかったはず、らしい。(蛇とトカゲ、ワニと亀が違うって、爬虫類って実は広義!)
エンディングでは何やら続編を匂わせて終わらせるが、一体何が出てくるんだ……
生物兵器としての恐竜を暗に示していたし……
映画『パシフィック・リム』『GODZILLA』のヒットを受けて、怪獣映画が見直されたようだが、強気のレジェンダリー・ピクチャーズ……
怪獣映画とは一線を画する“恐竜映画”であることを切に願う。
- ジル・ペンソ監督,レイ・ハリーハウゼン出演『レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人』2011年/フランス
http://columbia.jp/harryhausen/ - ジャック・ホーナー(Wikipedia)