デュフィ展 絵筆が奏でる 色彩のメロディー
公式サイト:
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_dufy/index.html
渋谷:Bunkamuraザ・ミュージアムにて。
~2014/7/27まで。
この画家の作品を何処かの美術館で拝見したはずだが、印象は残っていなかった。
しかし、この展覧会でデュフィの魅力を理解した。
特定の絵画というより、総括での感想。
現代の漫画やイラストレーションに近い作風だ。
明るい色調が観る人の気持ちをポジティブにする。
モノクロのフィルターをかけてしまえば、実線しか残らないだろう。
寒色と暖色、特に赤と青の対比が多く感じた。
広告にも使われている《馬に乗ったケスラー一家》はそれが活かされている。
これがデュフィの絵画における立体感の表現ではないだろうか?すなわち陰影、コントラストのようなものかも知れない。
それに至るまでの経過が面白かった。
中世の写本のような木版(モリス商会にインスパイア?)印象派のような作風、シニャックの点描とゴーギャンの色面……点と色の論争の影響をうけたものを経て、彼独自の色が生まれた。それはポップな、明度と彩度が高いものだ。
《電気の精》
ルネサンスから当代まで、技術や発明に携わった人々と神話の情景が重なり、極彩色で希望にあふれたヴィジョン。
パリ万博の電気館のために描かれた壁画のための下絵は、右から左に見る絵巻物のようだった。
《アンフィトリテ(海の女神)》
当時と神話世界の融合、とはいえ人物や象徴物は互いの世界と交流しない。
パラレルワールドのようでもあった。それは《麦打ち》に見られる、女神ケレスと農業経営者、神話と資本主義が手を結んだ絵画にも見受けられる。
女性達のモードとアカンサスの葉の意匠の組み合わせ。
華やかなベル・エボック期を思わせる。
ビアンキーニ・フェリエシャのためのテキスタイルデザインやドレスも展示されていた。
参考:Bianchini-Férier(Wikipedia 仏語)
そのテキスタイルデザインの中には、喜劇王チャップリンまであった。思わず笑みがこみ上げてきた。
後半の絵画は、晩年の多発性関節炎発症も相まってか(定かではないが)、大胆な筆遣いは形よりも色面を強調する。全ては色になる。
原色を多用した強烈な色彩と、激しいタッチの画風が挙げられる野獣派(フォーヴィズム)の画家に数えられるらしい。
成る程、確かにシュルレアリスムの概念に通じるものが見えた。
デュフィは同時代の画家から大きく影響され、画風が変わる時代も在る。
《網を持つ漁夫》はまるでピカソの絵画のようでもあるし、遠目から見ると、スペイン風、フラメンコの踊り手のような躍動感があった。
デュフィの絵画、その時代、哲学を理解する、良い機会だった。