映画『プロメテウス』感想
公式サイト
http://www.foxmovies.jp/prometheus/
私は満足している。
公開以前に得た情報では、1作目のリドリー・スコット監督による『エイリアン』の前日談/スピンオフ作品という事もあり、元々期待値が高かった。『エイリアン』冒頭における謎の遺跡(宇宙船)の巨大エイリアンに纏わる物語だという。
故・H.R.ギーガーのヴィジョンを再び見れたことだけでも嬉しい。
ただ、1作目『エイリアン』は「SFホラー」というジャンルに区分けされるが、『プロメテウス』は完全な「SF」だった。
ネタバレ込みの映画感想
映画冒頭で、太古の地球で後に“エンジニア”と呼ばれる存在が黒い液体を煽る。すると“エンジニア”は遺伝子レベルで分解されてしまい、足を滑らせ滝に落ちる。
水の中、分解された遺伝子は再構築され細胞化・生命として発現する。
物語の登場人物達は知る由も無い人類の起源。
思うに、“エンジニア”も人類と同じ存在に過ぎないのではないだろうか。或いは“エンジニア”も人類も「その程度」の思考しか持っていなかった。
人間が自らを創造するが故に超越した存在であるというものは勝手な想像に過ぎない、ということを揶揄しているようだった。
人類が接触した“エンジニア”は“怒り”を露にし、更には“復讐”という行動原理を見せた。
実に“人間らしい”行動である。
遺伝子構造が完全に一致するという設定も、それを示唆しているのではないだろうか?
人を創った存在が神であるという定義ならば、“エンジニア”は人間らしいギリシア神話の神のようだ。
そもそも『プロメテウス』における人類は明確な意図・役割を与えられた被造物なのであろうか?
映画冒頭だけではそれを判断する事は出来ない。
寧ろ偶発的な産物であった可能性が強い。
短絡的な発想をすれば、それ故に“エンジニア”は滅ぼす術を携えて地球に向かおうとしたのではないか――?
その答えを求めて、主人公は旅立つ。
真理の探求・それに伴う行動力は、人間の理想的な生き方だ。
そういえば、日本における映画の宣伝は「人類の起源」「人類はどこから来たのか?」であったが、同時にこの映画は「人間とは何か?」を哲学する壮大な物語のようだ。
そもそも『エイリアン』の時からこの物語の切り口は多様だった。
『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』でも簡潔に書かれているが、ホラー映画として恐怖表現の秀逸さは言わずもがな。それ以外に“戦うヒロイン”という女性の社会進出が肯定され始めた時代のジェンダー論等、解釈が多様なのである。
『プロメテウス』では人類の起源の探求の動機が大企業・ウェイランド社社長の死の恐怖とその回避だった。
人は何故、死ぬように出来ているのか?それを与えられたのか?
死を問う事が生を問う事に他ならない。
それを次世代の生を繋ぐ力のある“女”が問う所にも、私は意図を感じる。
この映画は2部構成の予定である。続編が楽しみだ。一体、どんな真理に至るのか?
細かいディテールにも解釈が出来たので、それについてもいつか書きたい。
考察
映画『プロメテウス』考察――“信じる”という人間性(2012/10/03)
映画『プロメテウス』考察――神話における巨人の人類創生と人間が失った神性(2013/06/08)