マウリッツハイス美術館展

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:展覧会

http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
上野・東京都美術館にて。
~2012/9/17まで。

真珠の耳飾りの少女》来日――
宣伝広告の展開が多く、それだけ期待が込められた展覧会である事を伺わせる。

小さな作品ゆえ、盗難に合いやすく他館に貸し出したがらないというフェルメールの作品。
その中で最も有名な《真珠の耳飾りの少女》が貸し出されたのは驚きだ。
マウリッツハイス美術館が今年4月から大規模な改修工事をするに伴い、貸し出されたとの事。その話に納得する。

今年はフェルメールの作品をよく見る。今年に入り4作品目だ。


フェルメール《真珠の耳飾りの少女》

フェルメール《真珠の耳飾りの女
これは肖像画ではなく「トローニー(tronie)」
オランダ語で「頭部の習作」の意味。 特定のモデルはおらず依頼主もいないため、 画家は想像や理想を膨らませて描いたものだ。
かつて題を《青いターバンの女》とされていた。
高価なラピスラズリを使って描かれたターバンは目を惹く。
聖女や高貴な存在に使われる青という色。名もない少女にそれを使用した事が斬新で、それを示唆したタイトルだった。
だが、光を表現しようとしたフェルメールの意図を汲むと巨大な真珠の光の方が馴染むようだ。

鮮やかな色彩、光が表現されている。
同時代の他のと比較する事が出来たので、《真珠の耳飾りの少女》が特異であった事が理解できる。
色鮮やかなのだ。
以前の日記にも書いたが‘当時のオランダ絵画が赤・黄・褐色が中心であった’中で、青・黄・赤の組み合わせの美しさは抜きん出ている。
【過去日記】『フェルメールからのラブレター展』

他の作品も興味深い。光の画家・レンブラント《シオメンの讃歌》など。光の画家による、舞台照明のように主題に神々しい光が当たっているドラマティックな作品。

ヤン・ブリューゲル(父)およびヘンドリック・ファン・バーレン《四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪》

ヤン・ブリューゲル(父)およびヘンドリック・ファン・バーレン
四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪
合作で果物部分をブリューゲル(父)が、ファン・バーレンを人物が描いたもの。各々の得意分野を担当した工房作品。
絵画が画家の個人的な表現手段というだけではなかった事が伺える一枚。

フェルメール《ディアナとニンフたち》

そしてフェルメール初期の作品《ディアナとニンフたち
偽のサインが上書きされ、の弟子"NMars"とされていたという。何故そのような事を?スキャンダルな想像や、盗難或いはその防止を意図した可能性を考えてしまった。
主題が他の有名作品とは異なるので驚く。ギリシア神話のニンフを描くそれはニンフの顔がフェルメールらしいとも思った。

マウリッツハイス美術館に見るオランダの歴史。交易で得た富とそれ故築けた質の良いコレクション。
そこに表現されるアイデンティティー。

総括して思うのはオランダの光への飢餓感だ。
フェルメールのカメラ・オブ・スキュラによる光の強調と、今回展示されている雲の多いオランダの風景画。晴天が稀であるとは本当かも知れない。
【過去日記】北川健二『フェルメール絵画の謎の本質を読み解く』

光への飢餓はフェルメールに限らなかった。
レンブラント然り、彼らはその飢餓を絵に表現し、満たしていった事を知った。


余談だが、力の入ったこの展覧会。
出品作品リストが小冊子になっていたりと展覧会を一味違った雰囲気にしている。
ただ、女優さんがイメージキャラクターを務めて《真珠の耳飾りの少女》に扮しているが、何故眉毛があるのか解せない。
リアルに再現しない所(眉毛をファンデーションで隠す等をしない)が手抜きのようで商業主義的で、更に絵と比較して違和感と映ってしまう。

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