納涼企画 ~六部/ 六道考壱
“納涼企画”と銘打っての考察。再び。
しかし、その前に――
先ずは、私の体験談。
今回は考察は書けないかも…
5年程前の蒸し暑い夏、私は自室の窓を開けたまま(網戸は閉めていた)眠っていた。
窓を開けておけば、比較的風が通るのだが、その日は風が無かったのかも知れない。
寝苦しい夜だった。
…………。
(……暑い…)
朦朧としている中で、遠くから音が聞こえて来た。
…ゥ…ウゥ……ゥォォ―オォ…―ン…
唸る様な音に、最初は遠くで暴走族か何かがエンジン音も高らかに騒いでいるの
だと思っていた。
しかし、その音は次第に近づいて来る。
(暑い…)
ウォォォ…―ン…オォォ…―…ン……ゥオォーン…
そして、次第にその音は詞である様に聞こえた。
ォォ…ォォオォーンン…ォォォォォォォォォ
まるでお経のようだと思った。
瞬間、急に身体が重くなり、息苦しくなった。
「…グッ」
窓の外から聞こえていたはずの音が次第に木霊し、寝ている私の周りを取り囲むようになっていた。
過呼吸にでもなったかと頭の隅で思っていた。どう対処するべきだったかと考えていると
気配を感じた。
「――――――――ッ!!」
心臓が早鐘を打つ。冷や汗がでた。
それは人の気配に似ていたが、今でも違うと断言出来る。
恐怖心を煽られる嫌な気配だった。
すぐ、側にいる。
頭に1人、足元に1人、両脇に2人ずつ。
あり得ない6人の気配があった。
それは、布団で寝ている私を取り囲むように立って、私を見下ろしているようだった。
漠然とした書き方になってしまうのは、直接それを見ていなかったためだ。
怪談で一般的に言われるような、金縛りにはあっていない様だったか、体を動かせなかった。それが躊躇われ、また、それをしてはいけない、という考えが占めた。
(それを見てはいけない――!!)
見ることも躊躇われたためか、瞼が金縛りにあっていたのかは、今となってはもう分からない。
いつの間にかお経のような音は止んでいた。あるのは、沈黙。そして
視線。
取り囲む気配から、凝視されている感覚があった。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ
自分の心音とその振動が、布団を通しても体に伝わってきた。
どの位その緊張の中にいたのかは解らない。
次に変化があった時、それはあっという間だった。
気配が一斉に動いたかと感じた瞬間、引っ張られるような、体が浮き上がる感覚があった。
持ち上げられる!!
何が、というのはやはり漠然としている。体か、あるいは魂というものか?
ただ、引きずり込まれるようなその感覚が嫌で、何かに捕まろうと思ったがそれが出来ない。頭の中で九字切りをしたが手応えを感じず、亡くなった祖父に助けを求めた。
それらは僅かな時間での出来事だった。
それで終わり。
目が覚めた時には陽は高く昇っており、刺すような夏の日差しと、夏特有の植物とアスファルトが焼ける匂いが窓から入ってきていた。
長々と書いたが、ちっとも怖くない、この文章…
悪夢を見たのか、解らない。しかし、夢を見た感覚では無かった。
“あれ”が夢であれ、何だか解りそうで解らないもどかしさ。
自分なりに調べた事が幾つかある。
それを書き留めておきたいと思っている。
と、いう所で今回は留めておこう。