映画『9 9番目の奇妙な人形』感想

白黒イラスト素材【シルエットAC】
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公式サイト:http://9.gaga.ne.jp/

人形の、不気味で愛嬌のある造形に惹かれた。ストーリーも期待通りの作品だった。

映画『ターミネーター』のように人類と機械が戦争をし、人類が滅んだ世界で、麻布(リネン)で作られた人形が目覚める事から始まる。

終末思想その後の物語で、私は“荒廃した世界に再生をもたらす布石”の物語だと解釈した。

その象徴としての“葬送”が、私には強烈なイメージとして残った。

人類を滅ぼした機械との闘争の中で麻人形達は、次々と仲間を失ってゆく。
機械に“魂”を奪われた仲間の抜け殻を生き残った人形達は手厚く葬っていた。
舟に横たえ、コインを瞼に乗せて水葬する――
葬送という、人間の文化的な儀式を。

人形であれば、壊れた部品を繋ぎ合わせ、布を縫い合わせてれば魂を再び戻せば、再び動くのではないだろうか?
しかし彼らはそれをしない。

個々の命は失われては戻らないことを人形が示唆していた。

機械との決戦後、奪われた仲間の魂を解放するシーンでは、魂が天に向かい空に広がると、雨が降る。
その水滴ひとつひとつに先程の魂の色がある。
死体が土に還り、恵みの雨が降り、新たな生命の苗床となる事。
冒頭にある「いのちを絶やしてはならない」という言葉通りに、生命のサイクルを故人の意志を継いだ人形が復元・継承させる物語だった。

思えば、脆い麻の布でできた人形達は土に還れるように創られていたのではないだろうか。
勿論、鋼鉄に覆われた機械との対比もあるだろうが。
実に人間に近く創造されていた気がする。

因みにこの『9 9番目の奇妙な人形』のような、前世紀の蒸気機関や気球を使ったSFを“スチーム・パンク”というらしい。正しくは‘「産業革命の原動力となった蒸気機関が、現実の歴史の絶頂期のありようを超越して発展した技術体系や社会を前提としたSF作品」、反理想郷を描いた物’のようだ。
だだし、今は大分広義に使われているようだ。
ショーン・コネリー主演『リーグ・オブ・レジェンド』やロバート・ダウニー・Jr.『シャーロック・ホームズ』もそうだろう。

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産業革命は技術を、人々の文化を劇的に変えた。
同時に自然の崩壊と戦争の予感、新しい終末思想が生まれたまさに節目の時だった。
最早、現代人は科学万能を謳わない。
技術革新の末、人は何処に行こうとしているのか、本当に生きようとしているのか。

今は、今更のように、自然との共生を模索している。
そのための技術、きっとそれは身近なものなのだろう。

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