映画『きっと、うまくいく(原題"3 Idiots")』感想

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きっと、うまくいく [Blu-ray]

日本では2013年公開だったが、もっと早く観ておきたかった。
凄く面白くて、良い映画だった!!
競争社会への風刺、学ぶとは何かという問題定義をユーモラスに訴えてくる映画だ。映画『いまを生きる(原題"Dead Poets Society")』にも共通した概念があると思う。
インド映画の魅力、ダンスシーンでダンサーが男性のみは初めて見た気がする。格好良かった。
初めて見たインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ(原題"Muthu")』では必ず周囲のダンサーは女性だった印象が強かったので。
歌パートが吹き替え(俳優陣が歌っているものではない)である事はご愛嬌。ミュージカルとは少し違う雰囲気が良い。

【あらすじ】
10年前、インド屈指の難関工科大学ICE(Imperial College of Engineering)。それぞれに家庭の期待を受けて入学してきたファルハーンとラージュー、そして自由奔放な天才・ランチョーの三人は寮でルームメイトとなる。何をするにも一緒の3人はしばしばバカ騒ぎをやらかし、学長や秀才だったチャトル等から"3 idiots"(三バカ)と呼ばれ目の敵にされていた。
大学卒業後、ランチョーは消息不明になっていた。
チャトルから「ランチョーの目撃情報を得た」と連絡を受けたファルハーンは、ラージューを誘い彼を探しに行く――

成績表や就職率という、結果が出るための効率的な勉強法しか教えない大学。
そこに手段が目的になってしまった、社会を垣間見る。
大学に入学したての生徒たちはカッコウの喩え話を聞く。学長自らが語る、競争社会の中でいかに効率よく勝っていくかの話だ。
しかしカッコウは果たして鳥の王だろうか?
余談だが鳥の王はミソサザイと言われる。
様々な逸話があるが、その多くは小さな体で大きな尽力をする存在として描かれている。

それは真の意味での学問では無いと、真っ向から異を唱えるランチョーは、理想の学生像だった。
彼は純粋な好奇心から物事を学び、成功とはその結果で後から付いてくる事を知っている。
大学内で荷物運びなどで働いている小柄な青年・マンモーハンに「勉強をしたければ制服を着て潜り込め」とアドバイスは面白い。
映画化した『ぼくと1ルピーの神様』では、主人公は日々の生活で経験した事からクイズ番組で大金を得る事ができた。それに近しい発想に思えた。

本当の幸せと豊かさは何だろう?
苦悩の大学時代から10年後、ファルハーンとラージューにはそれぞれの充実した人生があった。
この映画は社会風刺のコメ ディであるだけでなく、その苦渋とそれを乗り越えた人間の人生讃歌でもある。
彼らは他者や社会の尺度に求められた人間像に屈せず、自分自身を見つめ、自分自身を真に体現したのだから。

親にエンジニアになるよう求められ、進学したファルハーン。本当は写真を撮る事が好きで、センスもある。
彼はランチョーの後押しで、今は写真家として活躍している。
貧しい家庭出身のラージューは、追い詰められて投身自殺を図る。幸い一命は取りとめた。
彼は死に瀕した事で、自分自身を見つめ、ありのままの自分を肯定していた。
まるで悟りを開いたような、明るく穏やかな表情が印象的だった。
ヒロインのビアは将来有望の医学生だ。出来れば彼女の社会での活躍ぶりをもう少し描いて欲しかった。
ラブコメディの要素としての立場が強いためだろうか?
女性にとって結婚することが成功の様に描 かれている事が腑に落ちないのだが……
(それは男性からの視点で、大きく間違っている!女性にとって結婚は新しい関係の始まりなのだから)

周りの人間に良い影響を与えたランチョーは、一体何処へ行ってしまったのか?
名前と目撃情報を頼りに10年越しの再会を目指すが、そこで会ったランチョーは別人だった――
ミステリーの様な展開も交えながら、ランチョーを探す3人と大学時代の回想録が交互に展開される。
伏線も多く、映画の仕立は観る人間を飽きさせない。

インド社会に限った内容では無い。観終わった後、気持ちが前向きになる映画だった。
各国からリメイクのオファーがあると聞く。
でも私は、インド映画であるこの作品が一番良いと思う。

よく邦題で原作のイ メージが損なわれる傾向があるが、この邦題は妥当だったと思う。
“3バカ”ではだたのコメディ映画くらいの認知度になっていたかも知れない。

邦題の元であり、物語の重要なキーワードであり歌詞になっている"Aal Iz Well"
ランチョーは『イギリス統治時代のインドで夜警が街を見回りながら口にしていた言葉』と言っていた。
英語では無い?インドの言語だろうか?と思っていたが、少し調べると"All is Well"を指しているらしい。

ちなみにこの映画には原作がある模様。
“Five Point Someone ― What not to do at IIT!"

Five Point Someone: What Not to Do at IIT

いつか読んでみたい。

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