映画『グランド・イリュージョン』感想
公式サイト
http://www.grandillusion.jp/
原題はマジシャンの決まり文句"Now You See Me. Now You don’t."(見えますね、はい消えました)から来ている。
俳優陣が豪華で、面白い娯楽映画だった。
監督はリメイク版『タイタンの戦い』のルイ・レテリエ。この監督は娯楽の魅せ方が良い。
『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグとウディ・ハレルソンが再び共演していた。
…何だか似たようなキャラクターを演じていて、微笑ましかった。
マジックの面白さを楽しめる仕立てになっていた。
物語は単純かも知れないが、個々のディティールがパズルピースのように繋がりを持っている。
タロット札や“フォーホースマン(黙示録の四騎士)”など、オカルト要素をちらつかせ神秘的な演出をする。
雰囲気作りが実際のマジックのステージで大切な事を意識させられた。
もっとも、マジックと魔術の歴史は切り離せないのだが。
映像にあえてCGを駆使した演出(トリック)がある点は現代映画ならではのご愛嬌だと思う。
それはマジックを観る人間が“騙される事を楽しむ”のを前提に観に来ている事を浮き彫りにする。
しかし物語で重要なトリック部分は実際にある古典的手段を用いている。
主要なマジシャンのトリックのタイプがキャラクター毎に分けられ、物語が進むにつれて空間全体のタイプも異なっていた。
手先の器用さ、その技術によるカードマジックやスライ、脱出、瞬間移動などのギミック、会話を主体とするマジックであるバターによる催眠術。
トリックの一つである催眠術(暗示)はトンデモな設定と思う事なかれ。日常生活は暗示に満ちている。
例えば街に溢れる広告など企業に誘導されているものなのだから。
小人数の観客と向かい合って演じるクロースアップマジックが、大人数を前に舞台の上で行うステージマジックに。そして大規模なイリュージョンとなった。
騙す、騙されるが入れ子のようになっている。
「トリックは何か?」という好奇心と「黒幕は誰か?」というタネ明かしを求めて作品に引き込まれてしまう。
そこにかつてトリックを暴露され、失意のうちに行方不明になったあるマジシャンの影がちらつく。果たして首謀者は彼なのか?
騙すことが悪か?
騙された方が悪いのか?
騙し騙される事を楽しむマジックという特異な状態(娯楽)を通して、問題定義がされている。
映画内ではマジックのルーツ(物語のマクガフィン、マジシャンの秘密結社「ザ・アイ」)を、古代エジプトでファラオから食料を盗み奴 隷に与えていた集団としていた。
そのルーツを汲む4人のイリュージョニスト“フォーホースマン”は義賊という事になるだろうか。
だが…一部の人間を除き不特定多数の人間に金をばら撒くのは、果たして真に人の幸福には繋がらないと思うのだが……
そして黙示録の四騎士という言葉に破滅の予感を思わせ、一体誰がそうなるのかと先が気になってしまう。
全てのイリュージョンが終わった後に、限られた人間にだけ真相が淡々と語られる。
私たちは見ているはずなのに、何も見えていない。
仕掛けるマジシャン達の一挙一動が全て計算されたものであったという事に驚く。もう一回、不自然な所が無かったか確認してみたくなる。
マジックのトリックだけでなく、アクションも満載で、痛快な気分にしてくれる娯楽映画だった。