フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展
Bunkamuraザ・ミュージアムにて。
2011/5/22まで。
http://www.vermeer2011.com/
小さめの作品が多いフェルメール。
そのため盗難に合い易いというフェルメールの作品は、海外で展示されるのも希であるという。
その希少性からか、やはり展覧会の目玉となる作品。
それ以外に、“大航海時代”をキーワードに関連が在るドイツ・シュテーデル美術館所蔵のオランダ・フランドル絵画が展示。
フェルメール《地理学者》
女性の肖像が多いフェルメールの中で数少ない男性像の作品。
オランダの発展の基盤である大航海時代の象徴とも言うべき作品でもある。
背景やモティーフが航海に欠かせない「地理学」を表す。そして交易で成る裕福なオランダ市民の生活の品々を見ることが出来る。
1.背景の棚の上にある地球儀はオランダの重要な商圏であるインド洋海域が正面に向けられている。
2.背景向かって右側の壁に掛けられたヨーロッパ海図は、オランダ東インド会社の公認地図製作者を代々勤めたブラウ家により発行されたもの。
3.地図製作のために必要なコンパスと定規。
4.地理学者の上着は「ヤンポス・ロック(日本の上着)」と呼ばれた、オランダにもたらされた日本の着物やその模造品で、裕福な市民階級のステータス・シンボルとなったもの。
5.画面手前の机の上のゴブラン織りや壁の幅木の代わりにはめ込まれたフェルメールの故郷・デルフトの特産品のタイルなど、貴重な工芸品。
貿易大国オランダの象徴が描かれる。
ルーヴル美術館所蔵の《天文学者》との関連も在る。…と私は思う。
構図やモデルが同じである事、そしてどちらも航海に関連すると思うので。
参考:『天文学者』
http://www.icnet.ne.jp/~take/28.html
それに関連するオランダ・フランドル絵画の風景画・静物画。
細密な描写は博物学に基づくものがあると思う。
それらもやはり、交易がもたらしたと思う。
参考:『オランダ・ベルギーの絵画、蝶のいる静物画編』
http://www.site-andoh.com/still_life.html
地域や開花が異なる花々が活けられた花瓶。そこに蝶や昆虫、蜥蜴が描かれ、活気がある。
ルーラント・サーフェレイ《音楽で動物を魅了するオルフェウス》
動物の描写が細密に力が在る。
主題であるオルフェウスの姿は画面上小さい。
動物たちが雌雄つがいであることにノアの方舟との関連も指摘されるが、私はやはり博物学的な意図があるように思う。
他、レンブラント、ブリューゲルとブリューゲルの工房作品が展示。
充実した内容のものだった。