ウニカ・チュルン、ハンス・ベルメール ~ジャスミンおとこと狂気の愛~
またしても、終わってしまった展示会感想である訳だが。
神保町 ギャラリーかわまつにて。
http://www.gallery-kawamatsu.com/
ベルメールの作品は、どうしても球体関節人形、身体論、セクシャリティと切っても切り離せなくなっていた。
今回、ウニカとの関係性を垣間見て、私の中で何か新しい発見ができるのではと期待して見に行った。
版画のみ、を意識して見る機会が少なかったので、それを補完しに。
ハンス・ベルメール
《サド(“A Sade")》
融解した男女の肉体が入り乱れている官能、線の細さが形を無くすことの快楽を物語っているようだった。
《顔(“A Crooked Face")》
黒地に白、という普段の版画にイメージからは反転した色合いであることにも、インパクトがある作品だと思う。
エッチングではなく、直接銅板による力強く、払いのある線が魅力でもあることを知った。
ベルメールの版画は、球体関節人形の身体論とは相反する気がした。
可動性を意識し、人体を各パーツ毎に分ける解体作業を思わせる球体関節人形とは違い、融合する、泥のように混ざる様。
ウニカ・チュルン
《神託(“Oracles et Spectacles")》
女性にしてははっきりとした線、細かく描きこまれた力強い模様に驚かさせる。アウトサイダーアートに近い気がする。
人の顔の群体が、何か大きな個体を作っているようだったが、それが彼女にとっての“神”のような偉大なものかは私には解らなかった。
ベルメールのような直接的な性的なものは初見では見受けられなかったが、融合する点は同じだった。
参考:
《信託》
http://www.geocities.jp/belial1313xx/u_oracles_suite.html
『ウニカ・チュルン』
http://outsiderart.ld.infoseek.co.jp/jimmei/zurn.html
私はウニカの事をベルメールの作品を通してしか知らない。
ただ、こうして二人の作品が並べられて想う事は“同じ次元で、力のベクトルが相対的である”という事だった。
今回の展示会はもう1つの画廊・Gallery Luciferとの合同でもあったよう。
http://www.gallerylucifer.com/
こちらの画廊のオーナーの方ともお話しをさせて頂いた。
ウニカに、草間彌生に近しいもの――混合し、外に向かう力を見る、ベルメールの内向的な力とは異なるものを見る、そんな話をさせて頂いた。
話の中で、1つ確かめたかった事を伺ってみた。
H.R.ギーガーは、ベルメールの版画の影響を受けているのではないか、と言うこと。オーナーの方曰く、
『(直接の影響はないようだが?)恐らくみているでしょう』
私はギーガーに関する文献も、ベルメールに関する文献にあまり眼を通していなかったので、補完したい。
ベルメール(もしかしたらウニカ)は、後の作家に大きな影響を与えていると思う。
球体関節人形で四谷シモン、天野可淡、吉田良、恋月姫。
そして版画ではもしかしたらギーガー。
その繋がりを垣間見れたら、と思ったが、私の中では明確にならなかった。しかし、それを知る手立てを見た気がする。