西條冴子個展"Confessio Perditae"
南青山・南青山ギャラリーSpacekidsにて。
http://homepage1.nifty.com/spacekids/gallery.html
~2011/10/9まで。…って、明日までか……
3年ぶりとなる、人形師・西條冴子さんの個展。
本来春ごろ開催の予定だったが、震災の影響で延期に……
非常に楽しみだった。
隠れ家のような一軒家の二部屋を使っての展示。
部屋は白を基調にしたものと、黒で統一したものとで明確に分けられていた。
それは世界観も然り。BGMもその雰囲気に沿うものだった。
白い部屋はまるで“博物学”のようだった。
何故だか、纏わる知識を喚起させられるものが多く感じられた。
ビスクドールの内側は鉱物の輝きがあり、植物に囲まれ、知識を象徴するような書物の中にも埋め込まれている。
骨董品の視力測定用の眼鏡レンズセットのケースの中にも納まっている。
首だけの少年少女たちが引き出しの中や小箱から聖書やロザリオの祈りと共に顔を覗かせていた。
以前はアンティークの調度品に囲まれた少女幻想の雰囲気だったが、それがより発展して、調度品そのものに溶け込みつつあるようだった。
腹部が開いている少女人形の内側は楔に覆われていた。そこから思い出されるのは、優美で残酷なる娘――“鋼鉄の処女”だった。
他、ボックス・アート作品もあった。コーネルの作品とはまた違う、絵画的な表現だと思った。箱という、限られた空間内で表現する世界では西條さんはこのように表現するのかと、斬新な気持ちだった。
黒い部屋は“ゴス”の力が強い。ハロウィンの気配に合う、黒魔術的で覆い尽くすような造花が深い森を思わせた。
部屋の奥の壁の中央に、アンティークの小さめのピアノが配されており、シンメトリックな雰囲気がある。荘厳な音楽が流れていた。
黒、深い森、ピアノ、音楽からゴシック様式の教会を思い出させる。
間違いなく、ゴシックの精神の本質だと思った。
西條さんの人形とその世界観は、ゴスやファンタジーの精神に則りながら昇華された聖性を強く感じさせる。
鬼気迫る所から来る生の喚起とは違うものだ。
優しく惹かれる。懐古趣味の安心感や望郷のような思いがそうさせるのかも知れない。
ずっとこの部屋に居たくなる会場だった。
西條冴子さんサイト『Vita Fragilis』
http://vitafragilis.biroudo.jp/