新世紀の人形たち

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:個展

世紀末の人形たち

丸善 丸の内本店 4階ギャラリーAにて。
3/3まで。

人形展に行って来ました。
勿論、大好きな人形師・西條冴子さんが参加されているので。
今回はグループ展なので、他の人形師さんの作品を拝見できるので、新しい刺激を受けそうです。
普段通り、気になる、気に入った作品に関しての感想。

=西條さんの作品についての考察=

世界観が既に確固たる物をお持ちなので、言わずもがな。
繊細な懐古趣味の雰囲気は、会場に入って直ぐ気付きます。
今回の作品は、非常に象徴的なものでした。
高みへと昇るような雰囲気のディスプレイ。

西條さんの作品は、一種の“ゴス”の系譜であるとは思っていたのですが、今回はヨーロッパ中世、フランスに象徴される“ゴシック”の系譜に近くなったように見受けました。

中央、頂上に翼を持つ人形(おそらく頭部のみ)。それは智天使(ケルビム)を思わせ、その下に続く人形達は首にロザリオを下げている。
それはアクセサリー感覚であるとは思うが、信仰・祈りの象徴であるそれらがあること、周りに並べられたアンティークの譜面が、おそらく聖歌のものであることを考えると、キリスト教的精神を思わせる。
そしてそれに絡まる造花の蔦。
鳥の来る庭を連想されるが、私はそこから自然賛歌を想像し、フランス・ゴシック大聖堂が開拓によって失われつつある森や(キリスト教が入る以前の)土着の自然崇拝への情景から生まれたとする解釈を想起させた。
“ゴス”は闇の部分を強く語るが、この場合は闇が在る故に見える光、大本の“ゴシック”の精神性に近いように思われました。

林美登利
美登利のお人形ブログ
http://www.dolsballad.co.jp/shop/sakka/Midori_hayashi/main.html
この方の作品は、日本の“湿度”を感じさせる作品でした。風土に合っているというか…
見世物小屋や日本古来のアニミズムの系譜に近いものを感じました。
モティーフにしている人形たちは、“異形”に分類できるものでした。
半人半魚、半獣の人形達は可愛らしく、しかし人とは違う世界、自然の者達。山に入って迷ってしまい、森や川原で会えるような…そんな生き物。近代以降、失われつつあるそれらを思い出させるものでした。

七衣紋
水蜜桃の月 ~七衣紋の人形庭園~
この方の人形で、先ず驚いたのは、多様な人種表現。
様々な肌の色の人形たちがいました。世界観ではなく“個”としての人形表現。
お一人の作家で、顔形や肌の色が皆違う人形を創られるという事に驚きました。多様なものの見方に…
オバマ氏の大統領就任の件もあってか、ふと、惹かれるものがありました。

玉青
創作人形【球体関節人形-玉青-アオ乃ドオル】
今回の展示会DMの写真になっている人形の人形師。
この方の作品は、ひとつひとつに“魂”を込めている印象を受けました。リアリティの追求。

全体的に見て思ったことは、先ず、価値観の多様性。
私が球体関節人形を知るきっかけとなったのは、“ゴス”の精神からでした。四谷シモン、恋月姫、天野可淡、ハンス・ベルメール…
そこから、身体表現、芸術表現としてのそれを知り、呪術的なものとして、そして工芸や遊び相手としての“人形”というものを見た様に思います。
それらのどれにも偏らず、しかし、それらの内の系譜に当てはまる。
“新世紀の人形たち”からはそんな印象を受けました。新しい表現の確立ではなく、まだまだ模索している段階かも知れません。

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