映画『マルドゥック・スクランブル -圧縮-』感想

白黒イラスト素材【シルエットAC】
映画『マルドゥック・スクランブル -圧縮-』

公式サイト:http://m-scramble.jp/

本年度本屋大賞受賞『天地明察』の著者原作のアニメ映画。
妹が大ファンで、度々小説や原作漫画を読ませてもらっていた。
以来、私も冲方丁氏の作品は好きだ。
この作家の作品・作風は多岐に渡っていると思う。
歴史物、SF…あらゆる時代、背景。決して“同じ肉からハムを切り出す”ものではない。
奥深い作品の数々に感銘を受けていたので、アニメ映画化を楽しみにしていた。
3部作構成であるこの映画。今回は第一部。

正直な感想を述べると、「非常にもったいない」

初見でこの映画を観た人は果たして理解できるのか、疑問を感じた。
65分という、上映時間の尺のせいだろうか。
膨大な情報量を伴う物語に対し、サブタイトルの如き“圧縮”には“余韻”を感じさせず、私は見ていてのめりこむ事が出来なかった。
虐げられ続けた半生故に“心の殻”に閉じこもっている主人公の少女娼婦・バロットの苦悩と葛藤の描写が少ないためだと思われる。

とはいえ、銃撃戦のシーンは面白かった。
“心の殻”に閉じこもる故に無表情だったバロットが、対抗する“力”を得てそれを行使しているうちに陶酔し、自身を殺しに来た誘拐屋を笑みを浮かべて嬲り殺しにする表現の鬼気迫る所が。

映像は背景、特に遠未来的な部分ではない所、歴史を感じさせる旧市街?部分の描き込みはとても綺麗だった。
銃撃シーンはある意味“見せ場”なので見ごたえがあるのだが…
表現が――何だか10年以上のSFアニメを見ているようだった。
バロットが襲ってきた誘拐屋に対して何をしたのか、初めて見る人は理解できるのだろうか……

3部作なので、中途半端な切れ方をしているように思えたが、物語はまだこれから。
何だかんだ言いながらも、次回作も楽しみ。

私は小説版の『マルドゥック・スクランブル』をまだ読んではいないが、コミック版は読んだ。
小説版とは細部に相違があるが、コミックならではの魅力がある。
単行本は現在3巻まで刊行。

マルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC) マルドゥック・スクランブル(2) (少年マガジンコミックス) マルドゥック・スクランブル(3) (少年マガジンコミックス)

バロットが心の殻を破る描写、彼女のパートナーとなる金色のネズミ型兵器・ウフコックとのやり取りは心に響くものがある。
サイドストーリーの誘拐屋達個々人のトラウマ描写もあり、そこに見る負の連鎖と苦悩が興味深い。小説の描写の方が凄まじいようだが…

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