スイスの絵本画家 クライドルフの世界
渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムにて
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf/index.html
~2012/7/29まで。
初めて知った。スイスの絵本画家の展覧会。
19世紀、スイスとドイツで活躍した人だそうだ。
植物の擬人化という点でグランヴィルを思い出したが、彼と比べると素朴な絵で、それは子供を対象にしているためだと思う。
それでも描かれた自然をよく観察し描写している。
また、グランヴィルは人間の世界を風刺した描写が多いが、こちらは自然そのものへの讃歌だ。
スイスの高原に咲く花々が虫たちと一緒になって踊ったり、他の花々と交流する牧歌的な世界は微笑ましい。
花々のおしゃべりが聞こえてきそうだ。
下記、気になった作品。
『詩画集 花』より
《クルマバソウ》
ハーブで、不安・緊張をほぐし、睡眠作用があるという。
木の精霊がうたた寝をしており、それを示唆している。
植物図鑑の構図をしたクルマバソウが添えられ、群生したクルマバソウが絵がれている。
『アルプスの花物語』より
《エーデルワイスとシルバー・マンテル》
「エーデルワイスやどうしてそんな
あぶない崖っぷちにいるのかね?」
「あたしをめっけた腕白坊主に
うんとうんと大事に思わせるためよ」
スイスの国花のエーデルワイス。薬草としても知られ、乱獲され激減したという。そのため、人の入りにくい険しい場所に生えているものが残ったらしい。
他の作品でもクライドルフは植物の生態だけでなく、薬草としての効能、ギリシア神話を踏まえた上で擬人化していた。
手元に絵が無いが、《アドニスの埋葬》はギリシア神話の主題。アポロンの寵愛を受けた少年の悲劇の物語だが、埋葬のシーンにアポロンがおらず、女性の花々の手で埋葬される姿はキリストのそれを思わせる構図だった。それが面白い。
擬人化――
それは人と自然の親近感を深める一方、作者の空想であり人の世界とは異なる自然という“異界”を表しているという二面性があると考えた。
「小さな生き物の世界は私にとって大きな世界と同じくらい美しく大切だった」
クライドルフ”
そのためか、描かれた植生は長野県の高山にも馴染み深いもののように思われる。
リンドウやコケモモ…
ふと、夏の長野の高原が恋しくなる。
久しく山に行っていない。アートの語源は"ars(ラテン語)"であり、「技術」を意味する。そしてそれは自然の模倣を指す。
今、私に一番必要なのは自然にふれることなのだと思い至り、渇望する。
スイスには行ったことが無い。永世中立国、自然豊かな国であるイメージが強い。
それ故か、見ていると想像力をかき立てられる。
スイス政府観光局ページの特集に、クライドルフが愛したアルプスの花々についてがあった。こちらでも作品を見ることができる。
http://www.myswiss.jp/jp.cfm/home/mailmagazine/40/kreidolf/