北川健二個展 密室論 – Bleu de Lyonの仮縫いの部屋で
日本橋髙島屋X画廊にて。
~2011/10/10まで。
昨年もこちらで行っていらっしゃったか、先生の個展。
『北川健次展 目隠しされたロレンツォ・ロットが語る12の作り話』
コラージュ、写真の展覧会。
下記、気になった作品について。
《廃園――<手袋を持つ少年>》
古い本のページの上にコラージュされる、手袋と、裸婦像を覗き込むように配された若者の絵画。
その構図にディアナとアクタイオンの話を思い出す。
狩猟をしていたアクタイオンは水浴していたディアナ(アルテミス)をたまたま垣間見てしまう。それに気付いた処女神の怒りを買い、自身の猟犬に食い殺されてしまう。
この主題の絵画は数多くある。
参考:ティツィアーノ《ディアナとアクタイオン》
http://www.salvastyle.com/menu_renaissance/tiziano_attone.html
その連想からか、緊張感があった。
手袋はまた貞操の象徴でもあるという。それに身に着けるものの中ですぐ外したり(脱いだり)することができるものなので、エロティックな印象を与える。
《緑の意匠論》
小さな連続写真の横には、緑のマスキングテープが貼られていた。
そのテープの下に、何かが隠されているのではないかと想像してしまい、惹かれる。
《密室論 – Bleu de Lyonの仮縫いの部屋で》
これは販売されている冊子にも大きく掲載されていたものだ。
コルセットの女性の後ろ姿の上に配された、直線と円の幾何学図。
女性の身体の丸みと奇妙な一致が生まれており、女性の身体を理論で計測しているようだった。
遊びで作ったとおっしゃられていたアンティーク版画を用いたコラージュは、エルンストを意識させるものだった。
…やはり先生は凄いと思った。私は遊びでエルンストを真似る事が出来ない。
作品数も多く、表現も多様だったので、楽しめた。
会場入り口すぐの所に今回のコラージュに使われた本の表紙が展示されていた。出版された年“1888”の数字が捺されている。
その横には先生の寄稿があった。
1888年という切り裂きジャックが霧の街を騒がせ、エレファントマン(19世紀に身体の極度な奇形で有名になったコメディアン)が見世物小屋の花形となり、ゴッホの耳切り事件が起こり、シュルレアリスムの画家・キリコが生まれた年。
不安と不思議の時代への関心が綴られていた。
“切り裂き”と“仮縫い”というキーワードに繋がりを感じるのはコラージュの“分解”と“再構築”との類似のためだろう。
緑という色についても、「自然を象徴する色でありながら、人工的な色だ」と先生。
そのデリケートな色『緑』について、探求したいとおっしゃっていた。
私もそう思う。RGBで緑を表現しようとすると、これが難しい。値の僅かな違いで凄く印象が変わる。
ちょっと興味深いお話だった。
北川健二先生 公式サイト
http://kenjikitagawa.jp/