十面体―メドゥーサの透ける皮膚のために / リラダンの消えた鳥籠
『十面体―メドゥーサの透ける皮膚のために』
恵比寿・LIBRAIRIE6/シス書店にて。
http://www.librairie6.com/
2011/2/27まで。
精力的に個展をなさっている先生。
この書店とも雰囲気が合っていらっしゃる。
今回は旧作と新作コラージュだった。
以下、気になった作品。
《十面体 ―メドゥーサの透ける皮膚のために Ⅱ》同名の連作の中の一点。
マイブリッジの連続写真とフィルムを使ったコラージュの中で唯一、静止した聖職者の像を用いた作品だった。左右対称に配された像の安定した構図は、他の跳躍や動き出すモーションの作品群の中では異質であった。
別の小作品の連作の中にある《寓話 ―ソールズベリーの硬い石》も同じ理由で惹かれた。
画廊のオーナーの方と惹かれる作品について話し合った。
やはり好む作品というものは男女で差があるようだ。男性は“動き"のある作品――マイブリッジの連続写真を使った躍動感のあるものを、女性は“静か”な作品――寓意画、静物画を思わせるものを選ぶ傾向があるようだった。
連続写真のコラージュも私は好きだ。
ただ、それらの力強さと衝撃のある作品群が一堂に集まり、圧倒されるエネルギーの中で、安定感のある静かな構図に安堵してしまうようだった。
隣のアクセサリー店でも写真展をなさっていた。合同企画。
『リラダンの消えた鳥籠』
恵比寿・tmh.SLEEPにて。
http://www.atelier-tmh.com/
鳥籠をイメージした店内の、黒い壁と鉄格子の硬派な内装が、作品と合っていた。
《リラダンの消えた鳥籠》
近世紳士の出で立ちをした人形の向こう側にアンティークの鳥籠。ぼんやりと浮かび上がるのは女性の顔だ。
リラダンを未読であるため安易な発想であるが、彼女は“未来のイヴ”であろうか。
科学万能が謳われた時代、科学の力で“理想の女性”を造った男の数奇な物語。
フランスのパッサージュで撮られたとの事。重ね、繋ぎ合わされたそれらの写真は題名のそれと相俟って19世紀の華やかさとミステリアスな部分へと誘ってくれる。
〈写真〉とは、夢と現のあわいに揺蕩う、一瞬の光との交接である。
それは何よりも官能的であり、むしろ死との危うい戯れに近いものがある。――北川健次
なるほど白昼夢か。
北川健次先生公式サイト
http://kenjikitagawa.jp/