ジャン=レオン・ジェローム《ピグマリュオンとガラテア》

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:美術鑑賞
ジャン=レオン・ジェローム《ピグマリュオンとガラテア》

『“ピグマリュオン”を描いて』とリクエストされ、描いていた。

ギリシア神話好きとしては堪らない主題だ。

これを描くにあたり、久しぶりにギリシア神話を読み直し、歴代の名画を改めて調べた。
どうしても忘れられない一枚がある。
ジャン=レオン・ジェローム《ピグマリュオンとガラテア》
象牙の彫像が今まさに人間になる一瞬を描いたもの。
抱擁し口付けする官能的な一瞬を描いている。

それ以前にも多くの画家が同主題を描いているが、象牙から人肌への変化の途中を描いたものはこれが初めてではないだろうか。

このロマン主義絵画の巨匠に、私は遠く及ばない。

私はこの物語に、かつて自身の理想を成し遂げる匠のたとえ話と考えていたが、そうではない。

この主題は芸術至上主義である。

“真の芸(術)は芸(術)を隠す”

日本の世阿弥の“秘すれば花”という事か。

本当の芸術家はその技巧を見せるのではなく、その技巧を思わせない自然な表現で見るものを魅せる。
写真が発明される前は尚更だと思い、写真で表現しようと思っても、光学的にその精神を写し出すのは至難の技だと思う。

もうひとつ挙げられる事はピグマリュオンの日本的な解釈として“人形愛”だろうか。
四谷シモンの人形教室の名にもなっているのだから。
球体関節人形に限って言えば、その可動性からより人間に近いのではないかと想像する。
人形が完全な人体造形を有する存在としてあるならば、確かに自然を越えている。
表現こそ違うが、その精神は似ていると思った。

そんな事を考えていたが、もう1つ気になるものを思い出した。
ピグマリオン症候群という言葉があったが、これはどういう意味だったか…
調べてみると‘それは病気ではなくある種の病的な態度のこと。
‘自分の作ったモデル(理論)を現象(事実)そのものより優先すること’とあった。
自分の作り出したアイデアが、真理だと思い込むこと。
人に与えられたアイデアが、真理だと思い込むこと。

前述の人形愛考のこともあって耳が痛い……

そんな事を書き並べてみると、私には何だか対極な意味合いを見出だせそうな主題となった。
また挑戦してみたい主題である。

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