第16回 文化庁メディア芸術祭
終わってしまったので、書こうかどうか迷っていた訳だが…やはり書こう。
公式サイト:
http://j-mediaarts.jp/
何だか去年よりも会場が見やすくなったように感じる。
ブース一つ一つのスペースが広いためだろうか?
【過去日記】『第15回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展』
全体的な印象は“日本らしさ”に関わるものが多かったような…311の事もあるので、それがもたらした心境が作品として形を成す時期になった事も要因かも知れない。
以下、気になった個々の作品に関して。
アニメーション部門 大賞
≪火要鎮≫
大友 克洋の短編アニメーション
ご一緒頂いた方が曰く「柄の動きまで表現されている」との事だから、驚きである。
てっきり『八百屋お七の大火』を題材にしたものかと思ったが、元にした独自の物語だった。
八百屋お七(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E7%99%BE%E5%B1%8B%E3%81%8A%E4%B8%83
興味深かったのは、その構図。伝統的な日本の鳥瞰図で画面が展開してゆく。
本当に錦絵が動いているようだった。
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉が残るくらいなのだから、この主題は日本人のアイデンティティーに関わる事象なのかもしれない。
色々調べると、やはり江戸は燃えやすい材質で出来た建物が密集していることが一因なので、火事対策の都市計画(延焼を防ぐための広場・空地である火除地や広小路)も発案されていたようだが、指定された場所に家屋が建設されたり政権の変化や幕府の財政窮乏で徹底されなかったようだ。
また、火災は仕方ない事と考えていた江戸っ子気質もあるようだ。
エンターテインメント部門 優秀賞
倉田 稔≪勝手に入るゴミ箱≫
YouTubeで話題になったアレ。
FRISKのCMオマージュや私は単純に発想が面白かったので、好感を持っている。
工学専門の人には仕組みそのものが興味深い事だろう。
世界でも屈指の、衛生面に気を使う日本。トイレも美しくキレイで、自動化している日本はゴミの廃棄にもシステムを構築する日が来るのだろうか?(笑)
マンガ部門 優秀賞
『ムチャチョ―ある少年の革命』
エマニュエル・ルパージュ(フランス)
綺麗な絵に惹かれ書店で手にとったので、これが優秀賞を取った事が感慨深い。
正にアートだったので、これは至極当然だと思った。
日本の漫画とは異なるコマ割り――正しくコマであり、その1つ1つが絵画のようだった。
物語も人間関係や激動の社会が複雑に絡み、読み応えがある。
同性愛の描写は大自然の情景の中に横たわる美しく描かれた肉体は、生/性の賛歌のような描写だった。
マンガ部門 新人賞
『凍りの掌 シベリア抑留記』
おざわ ゆき(日本)
かなりディープな主題でグロテスクな内容が、フラットな絵で読みやすくなっていると思う。
そこにあるのは人間の死を目の当たりにし、ただ、今を生きようとした人間の姿だ。
私の亡くなった祖父もシベリア抑留を体験した人だったらしい。私は詳しい話を聞けなかった。
戦争というものが、法で問えないものであることをつくづく思う。
やはり楽しかった。
ここで見た作品で興味を持ち、読んでみたい、見てみたいと思うものが出てくるためだと思う。
私は“日本らしさ”という、日本のアイデンティティのような視点から模索していたが、勿論それだけではなかった。
変化し続ける今について、メディアはその一部分を記録し続けていた。