映画『インセプション』感想

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ようやく鑑賞。
映像美も話題だったが『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督作品という事もあり、期待値が高かった。

他の映画作品と比較し、端的に言ってしまえば、『マトリックス』のようであり、より具象的な『ザ・セル』だろう。よく指摘されるように。

夢の世界に入りアイデアを盗む、或いはアイデアを‘植え込む’というスパイ行為。
現実での身体の状態が夢に反映されたり、夢の中、深層心理に深く根付いたものが現実にも影響する――
入れ子のような世界での駆引きが織り成す緊張感。

だが、SFスパイアクション、という枠組みに留まらない。
ライバル企業の組織分断を促すための思考を‘インセプション(劇中の意味は植え込み)’する筋書きだが、そのキーワードがネガティブではない所に、心理カウンセリングの要素を見出だす事も出来るのではないだろうか。

何重もの要素が折り重なる中で到達する深層――
それは心の中心であり、物語の核心であり、主人公の心の闇であり、真相だった。

現実と区別がつかなくなる混乱と恐怖。
それを物語の最後でトーテム(夢へ侵入する者が、自分が夢の中にいるのか、現実世界にいるのかを判断をするために使用する物。主人公はコマがトーテム。夢の中であればコマは回り続けるという設定になっている)が今にも倒れそうにながらも回り続けるシーンで観る者に共感を促す。

映像の面では、日本を思わせる城が良かった。
ハリウッド映画ではよくある事だが、日本を指していても、日本人である私が見ると、何処か中華的であるものが多い。
だが、この城はそれを感じさせない。
ニッポンバロック的な金銀の豪華絢爛さは見ていて抵抗が無かった。
その作り込みに感嘆。

意識しているのだろうか、格天井。
以前、寺や銭湯の建築様式で使われる“唐破風”が神社仏閣に使われているもので、これが“極楽浄土への入口”を表している話をした。
それで行くなら、室内の格天井は極楽浄土を表すのではないだろうか。
(…これについては文献を当たっていないのだが)
それだけでここが“異界”――現実ではないことを表しているようだった。

またしても密度の濃い映画だった。
考える材料も十二分にある…
少しネットを見ると、劇中に表れるキーワードの邦訳“虚無”が原文では"limbo"であるため、ダンテ『神曲』と絡めているものがあったが、私はこれとは違う方面から考えている。
それについては、長くなりそうなので、別日記に。

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