山本六三展 - 聖なるエロス -

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山本六三 -聖なるエロス-

山本六三展 - 聖なるエロス -

渋谷Bunkamura Gallery(企画:スパンアートギャラリー)
3/31まで。

2001年にお亡くなりになられた方ですが…
没後、久しぶりの展示会です。
この方の画集を手に取り、蔵書票を見る機会があり、すっかりその妖艶な画風に魅せられてしまいました。
また、この方の作品は、19世紀象徴主義絵画のオマージュが多く、それへの傾倒が著しかった頃の私には、もう、眼が離せなかった…
DMの絵となっている《天使・メランコリアⅠ》を見たくて。

油彩画、エッチング、蔵書票を中心に、展示。
しかし…目当てにしていた《メランコリアⅠ》は、諸事情あって展示できなかった模様。
…やはり人気画家。

《夜の帳を持つ天使》
《メランコリア》と同じ構図。夜色の帳…を被った両性具有者。
よく見ると、足や身体に蔦の様な曲線が美しい文様が施されている。モローのように。
それは陰毛の部分にも。裸体像に陰毛が描かれるようになったのは、近現代に入ってからか…陰毛を描くということは、春画と紙一重であり、かつては禁忌だった。
“現代”だからこそ出来る表現かも知れない。

《横たわるヘルマフロディトス》
この主題は外せない。両性具有のもう一つの姿。二人が合体して生まれた――
しかし、このヘルマフロディトスは、ギリシア美術のそれというよりは、オルフェウスの系譜に似ているように思えた。作者を忘れてしまった…浜辺に横たわり、悲嘆にくれるオルフェウスの絵画。あれは、誰だったか――
参考:ルーヴル美術館 眠るヘルマフロディトス

《女友達》
『悪の華』を思わせる、女性の同性愛描写。ベッドの上に、折り重なった女たち。少女のようです。
同名の作品で、いくつかパターンがあります。

《スフィンクス》
象徴主義の、スフィンクスと同じポージング。“獅子女”にふさわしい、慄然とした姿。

《失われた手袋》
静物画が印象的でした。
フェルナン・クノップフの静物画と同じ系譜のような…光の灯っていないランプ、時計、手袋…
手袋は女性を“守る”ものの象徴。それが、失われている……その危うさ。
ヴァニタスの系譜であることは言うまでも無い。
参考:ヴァニタス(虚栄) -静物画の寓意

《イカロスの夢》
淡い紅の翼のイカロス…竪琴を持った女性が寄り添うように座している。失墜して死するイカロスと、モロー、クノップフのオルフェウス像がリンクし、死の匂いを感じる。“死とは眠り”と言う言葉を連想する。ハーバード・ドレイパー《イカロス哀悼》を思い出す。

《眼球譚》の挿絵
ベルメールの影響を受けている、曲線美と繊細な線。ルドンのイメージも組んでいるかと思われる。
矢張り魅力です。

19世紀末の美術の系譜。
闇の中に、艶然と微笑む両性具有者…合成獣…女たち…
光り輝くその姿に、祈りを捧げたくなる。
様々な思いが交錯してしまう。

しかし…またしても会期ぎりぎり…
カタログが売り切れでした…いえ、私が伺うの遅いから仕方無いのですが。それでも増刷するとの事でしたので、予約。

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