西條冴子人形展 Preces Ciceris Patefacta
敬愛する人形師・西條冴子さんの個展。
南青山 ギャラリーSpacekids
http://homepage1.nifty.com/spacekids/gallery.html
11/23まで。
独特の顔立ちをした、繊細な人形達――
西條さんが創る彼らの姿は、懐古趣味的な幻想です。
以前は、彼らを拝見していて、“メメント・モリ(死を想え)”や“ファム・ファタル(宿命の女)”の系譜を見ていたのですが、今回はそれとは異なる印象を受けました。
形而上的な――聖性を受けるのです。
展示の仕方にも確固とした世界観をお持ちなので、覗う度に充実した一時を過ごす事が出来ます。
一軒家のギャラリーの2部屋を使われた展示。
手前の部屋は白い、ヴィクトリア調を思わせる世界観。白い薄布に留まる蝶、アンティークの本や楽譜……
テーブルの上に置かれた銀の盆の上に、少年の人形。
果物が添えられ、側にはナイフが置かれている……
二人のコックが気を失ってゐる少年を皿に仰向けに寝かせた。
(中略)
大きなサラダの葉が裸体のぐるりに美しく並べられた。特大の鉄のナイフとフォークが皿に添へられた。
(中略)
「ここが切りいいでせう」
(中略)…私は右手のナイフで胸の肉をそろそろ、まづ薄く、切り出した。…
三島由紀夫のこの行が思い出されました。究極の美食とエロティシズム…
奥の部屋は今までの印象とは異なりました。
そこは一種の植物園――森に迷い込んだようです。
先程の“白”とは対を成す、黒い薄布が天井に張られ、蔦が覆う部屋。
部屋の奥にある鏡は水面を思わせ、私にはミレイの《オフィーリア》を容易く連想させる…
勿論、見たばかりという事もあると思いますが。
そこに居る人形たちは、人魚であったり、タツノオトシゴであったり、より異形のものたち。アニミズムでは無く、妖精といった風です。
今回はオブジェも増えていました。
額装に入った月と智天使を思わせるものは、宗教的というよりは童話世界。
その世界に惹き込まれました。
部屋を流れる曲や香りもも異なる拘りように感嘆。
上品な幻想譚です。