ワイン展 ―ぶどうから生まれた奇跡―

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:ワイン

ワイン展 ―ぶどうから生まれた奇跡―
公式サイト:http://wine-exhibition.com/
上野・国立科学博物館にて。~2016/2/21まで。

協賛がメルシャン(現在KIRINの子会社)とサントリーで、出店していたワインショップ・エノテカはアサヒグループという、メーカーの垣根を超えていた。

3つのゾーンに分けて、其々の切り口からワインを紐解いていく仕立ての会場だった。

zone01.ワイナリーに行ってみよう

zone01の部分だけダメ出ししたい。特に内容ではなく展示の見せ方について。
前半はワインセラーの再現して、ワインの醸造方法をおおまかに表現している。

その解説が大雑把で、一般的なイメージの粋を出ない気がした。
製造方法に関わる部分なので、ワイナリーにとって企業秘密な部分も多いのだろう。

解説のパネル展示の字詰めが甘く、安っぽく見えてしまうのだ。何処か古い展示場からの借り物なのだろうか……
ワインが高級志向だとは思わない。(以前飲んだことがあるルーマニアのワインは安くて美味しかった。飲みやすかった。)
だが、チラシのデザインがシンプルで高級感を漂わせながら、細部がこれではどうなのか……
そのため『神の雫』とコラボレーションも、浮いた印象がある……

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ワイナリーを疑似体験する品々は作り物なので、リアリティーに欠ける。
……ちゃんとワイナリーに行って体験れば良いだけの話だが。

「ワインを科学する」ということだったが、化学を不得手とする私には、平面で書かれた塩基記号から化学反応を想像するのに時間がかかってしまった……
もっと見せ方を凝れたら楽しかろうに……動画や立体模型で化学変化を表現しても良かったのではなかろうか?

『もやしもん』6巻はワインについての話があった。
そこに書かれているくらいの情報を、独自に噛み砕いて展示して欲しかった。

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……でもそれを実現するには予算の問題がありそうだ。

zone02.ワインの歴史

zone02になると、一気に活気づいた雰囲気があった。
古代の酒壺やリュトンが展示され、本物故のリアリティが増す。
ワインの歴史といってもルーツは定かではなく、おそらく偶発的に発見されたと想像されている。
しかしアルメニア辺りがそうなのかも知れない。
旧約聖書のノアの物語に酒造に纏わるエピソードがあること、アララト山にモデルとなったと思われる遺跡の事を展覧会では挙げていたが、ギリシア神話の酒神ディオニュソスが小アジアの神に由来すると言われていることも踏まえると、有り得そうだ。

古代のワインのつくり方についての解説などは特に無かった……
地面に埋めた壺の中に、足で潰したブドウ果汁が流し込まれる仕組みであることは理解したが、それ以上は特に明記されていなかった。
古代エジプトでも作っていた様なので、現代の製造方法とは何が異なるのか知りたかったが、詳細や再現はなかった。
酒造法に引っかかるためだろう……
ちょっと気になって調べると以下のようだった。
参考:『古代エジプトと「酒」 ビール&ワイン
http://55096962.at.webry.info/201106/article_14.html

日本のワインについても紹介されていて、貴重な資料群が展示されていた。
高温多湿の日本の気候はワインに適さず、明治期に試みても失敗に終わった事、そこから海外でワイン造りを学び、日本に適したブドウ種マスカット・ベーリーAが開発された事……
あっさりと資料だけが展示されていて、勿体無いと思った。その物語を紹介するだけでも面白いのに……
何故、日本の甲州地域がワイン造りに適しているとされたのか、気候・地質調査から見出されたことは実に科学的だと思う。
そのことを展示でもっと取り上げて良かったのではないだろうか……

zone03.ワインをもっと楽しむ

このエリアが一番馴染みやすいものだったと思う。エリアのタイトル通りで、一般的に浸透しているワインのイメージと接し方だからだろう。

フレーバードワインについて、香り付けについての言及をしたエリアは楽しかった。
展示を見ていると、何処からともなく嗅覚を刺激するフレーバーのサンプルの香りに惹かれてしまう。
博物館らしい展示方法だった。

デカンタ(デキャンタ)についても、その紹介と言及があった。
器によってワインが持つ奥深さが花開くこと――『神の雫』でもその重要性を紹介していた。
展示(と解説)されていたものはやはりリーデル社のもの。
会社主催のセミナー教室も開かれているし、ワインが味覚だけでなく五感で体感できる事や教養として楽しめる事を伝えるノウハウも持っているだろうから、ここで紹介されるのは当然だと思う。(しかし協賛はしていない?)
繊細なグラスに匠の技を見る。製造工程はパネルで紹介されるのみだったが、グラスの種類の豊富さを見るだけでも楽しめた。
しかし……どのワインにどのグラスが向いているのか、ちょっとくらい紹介しても良いのでは?
それは『神の雫』然り、自分で本を読めということか。

私にとって分かりやすくて一番楽しめたのは、シャトー・ムートン・ロートシルトのワインラベルの展示。画家たちのラベルは、画家の個性もさることながら、時代を経るとその時を象徴するように思えた。自身の好きな画家、ピカソや女性画家であるレオノール・フィニ(※1)、ニキ・ド・サンフファル(※2)のものまで!
以下のサイトで過去のラベルを拝見できる。

Château Mouton Rothschild – Paintings for the Labels
http://www.chateau-mouton-rothschild.com/label-art  (仏語:2016/1/3確認)


ワイン、酒がテーマということもあって、それを箱物の中で伝えるのには限界があったようにも思う……
味や香りについて伝えたくても、それは本物に触れる事、嗜む他に術はなく、それは未成年厳禁の分野なので難しい。
何より日持ちするとはいえ、発酵食品であり、ワインがナマモノである事に変わりはない。

「教養としてのワイン」を伝えても良さそうだが、それは文系の分野で“科学博物館”の分野ではない(美術館のすること?)ためなのか、そうした視点は見受けられなかった……

昨年読んだ本『葡萄酒物語』は有名なワインの歴史やエピソードを紹介する本が面白かった。
ワインの開発の歴史に留まらず、愛飲していた歴史上の偉人たちに画家や文豪の話から、ワインが出てくる文学作品や映画まで載っている。
喜怒哀楽に時に愛――ワインに纏わるエピソードからワインを選び飲んでみたくなる。
宇野亜喜良氏の美麗なイラストレーションがノスタルジックな雰囲気を更に醸してくれた。

葡萄酒物語: ワインをめぐるとっておきの17話

  1.  レオノール・フィニ(1907-1996)アルゼンチン人の画家。エロティックで幻想的な作風でしばしばシュルレアリスムの画家の一人に加えられている。
    Leonor Fini http://www.tendreams.org/fini.htm(英語:2016/1/3確認)
  2.  ニキ・ド・サンファル(1930-2002)フランス人のモデル、画家・彫刻家。カラフルな原色の太った女性像をモティーフにした作風が有名。スイスのチューリッヒ駅構内の天井にオブジェがある。
    昨年(2015/9/18~2015/12/14)日本でも回顧展があった。
    http://www.niki2015.jp/(2016/1/3確認)
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