北川健次展 「ガール・ド・リオンの接合された三人の姉妹」
日本橋髙島屋 6階 美術画廊Xにて。
http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event3/
~2013/11/18まで。
今年は精力的に個展をされていらっしゃる、北川健次先生。
今回の個展は、今までと比べて神話の印象を強められた印象を受けた。
アリアドネやキューピッド、ディアナを謳った詩が会場に入って直ぐにあるためか――
素材が、或いはイタリアの空気が、私にそう思わせたのかも知れない。
拝見していると情報量が多い、重厚な世界観だった。
以下、気になった作品の感想。
《フランドルの見えない風景》
遠方に見える、ニスで割れたフランドル絵画?の風景は手前にある扉や棚に塞がれてしまい、見ることが出来ない。
その中央には折り目があり、それに沿って鳩目鋲が均等に配されている。
風景が見えないもどかしさから、その折り目に沿って観音開きにして見る事ができるのではないかと想像してしまう。
好奇心を掻き立てられる。
《FLORENZ ―ダンテのいる風景》
《FLORENZ ―ダンテのいない風景》
対の作品になるようだ。横に並んで壁に掛けられていた。
《いる風景》には古地図に中世の装束を着た群衆。《いない風景》は古い筆記体の手紙の上に群衆がコラージュされていた。
ダンテを連想させる赤い装束の人間の有無から、彼の人生に思いを馳せる。
(コラージュの赤い装束の人物はダンテでは無い)
政権争いからフィレンツェを追放され、二度とフィレンツェの地を踏む事は無かった。今はラヴェンナに眠っている。
手紙は、祖国への思いだろうか?或いは天国かベアトリーチェに向けてか…
《狂王》
甲冑の肖像画は、顔から肩、胴にかけて大きく切り取られている。
甲冑の中はまるで紫の火で燃えているかのようだ。その火の中を舞う蝶の姿。
速水御舟《炎舞》の影響を強く感じる。先生もインスピレーションを得たとおっしゃっていた。
参考:速水御舟『炎舞』
http://www.yamatane-museum.or.jp/collection/11.htm
身を焼く蝶に殉教する魂、甲冑が戦いを髣髴させる。
狂王といえばルードヴィッヒ2世。彼の理想への戦いは現実逃避だった。
内側の熱い理想に身を滅ぼした王の夢の形骸は今も現実世界に残っている。
そして今年は彼が憧れたリヒャルト・ワーグナーの生誕200周年。
ふと、私が神話と思ったものは、文字で伝えられてきたものであり、文学であり、すなわち詩であると思い至る。
背景に使われた古い手紙が、本が、見ていると語りかけてくるようだった。
解体されて意味不明になったにも関わらず、その断章を深読みできるしたくなる。
コラージュは詩の技法だった。
詩と言えば、以前拝見したモノトーンの回廊の写真作品が、須賀敦子『イタリアの詩人たち 新装版』の装丁に採用されたとのこと。
先生の作品を拝見すると、触発されて何か作りたくなる。
北川健次先生公式サイト:
http://kenjikitagawa.jp/