レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:展覧会

渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムにて。
~2012/6/10まで。

レオナルドの『絵画論』を体現したような展覧会だった。レオナルド派や他のルネサンス期の絵画からそれらを探る仕立てになっていたように思う。

正直、見るまでこの展覧会を侮っていた。《ほつれ髪の女》以外、殆どが再現・ファクシミリ版だと思っていたためだ。

2007年の『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』では日本国内で《受胎告知》を拝見し、感無量だったのだが、他の展示物は当時の研究を現代に“再現”したものだったため、“当時の”技術や感覚が掴めず、物足りなさを感じていた。(ヴァーチャルリアリティを用いた解説は解り易く面白いのだが、“仮想”に過ぎない)リアリティを伴わなかったのだ。

だが、この展覧会では“当時の”本物を多く見ることが出来た。それが見る人に実感を伴わせてくれる。
レオナルドは生前完成させた絵が少ないので、『絵画論』の断章やレオナルド派の絵画からそれを見いだせる。

レオナルド・ダ・ヴィンチ考案/アルブレヒト・デューラー《柳の枝の飾り文様》

レオナルド・ダ・ヴィンチ考案/アルブレヒト・デューラー
《柳の枝の飾り文様》

会場入って直ぐの所に掛けられた「ダ・ヴィンチ・ノット」
ヴィンチ村の名はその地に茂っていた木々の後期ラテン語名ヴィンチ・ヴィンキと関係しているという。ヴィンチ村の象徴から由来するとは知らなかった。
自然界に溢れる規則性――植物、毛髪、筋肉などの“絡み合い”にレオナルドが関心を持ち、表した。
文様内には結び目が一切無い。
これはデューラーの手によるものらしい。直接の面識があったかは不明だが、書物なり「情報」を通して接点があったように思う。
この絡み合う文様がウィンザー紙葉に見られる女性の編み込みの髪型にも繋がる。(これは後でパネル展示されていた)

レオナルドが探求していた、人間の内面――心、感情の表現の模索について。
「慎ましやかな女性を描くときはうつむき加減で斜めに向くのが良い」
《ほつれ髪の女》に繋がる。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ほつれ髪の女》

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ほつれ髪の女》
実物を拝見して、息を呑む。
浮かび上がる白い顔は美しく、思慮深かった。
鉛白が生み出す輝く白。宣伝の印刷物ではそれは表現しきれていない。

この女性美は《レダと白鳥》にも見られる。

《レダと白鳥》(下絵による模写)

レオナルド本人の筆で仕上げなかったこと、加筆されているので参考作品ではあるのだが、S字型の艶かしい女性像と表情が美しい。空気遠近法を取り入れた遠景など、レオナルドらしさが垣間見れる。
そして緻密な編み込みの髪型。これはどうやら鬘だったらしい。‘この鬘はどんな髪型でも脱着可能である’と添えられているそうだ。

《レダと白鳥》(ミケランジェロの下絵による模写)

参考作品ではあったがミケランジェロによる《レダと白鳥》もあった。
あまりに直接的な描写のため、本物は焼失してしまったので、これは当時の画家が下絵を元に描いたもの。官能的だ。
実に対照的な描写だと思う。
レオナルドは暗示と静の美を求め、ミケランジェロは活力と動の美を表現したのだろうか。

レオナルド『絵画論』をしっかりと読んだことが無い。断片的なものなので。
今回の展覧会を拝見して、これらの断片が現存するレオナルドの名作に反映されていることが解るだろう。
レオナルドとその弟子の共同制作《巌窟の聖母》にも見受けられる。

他にも様々な模索と研究をしていたレオナルド。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《衣紋の習作》

《衣紋の習作》に見る光の当たり方と布、衣服の皺の研究。
愛弟子サライ(小悪魔の意)と言われる男性頭部の習作も。古代ギリシアの青年の彫像を思わせる美丈夫だと思った。この青年が《最後の晩餐》のユダのモデルであったのか?

展覧会ではレオナルド《モナ・リザ》のイメージの展開や後世への影響、神格化されるレオナルドの事なども取り上げられて面白かった。


ご一緒させて頂いた知人の方の薦めでシス書店に向かう。
そこに山本六三氏の版画があるという。
山本六三展 - 聖なるエロス -

第11回企画〜「動物相/Fauna」展

第11回企画~「動物相/Fauna」展
恵比寿・シス書店にて。
http://www.librairie6.com/
~2012/5/27まで。

目当ての山本六三は入り口直ぐにかかっていた。
白鳥》をモティーフにしたそれはまるで懐中時計のようだった。
レダと白鳥》を見た後だったので、イメージにギャップが……
これは神話よりも星座の白鳥のイメージにリンクした。

その他、野中ユリ、山下陽子女史ら、北川健二先生の作品も。

動物を主題とした作品群は愛らしくもクールであった。

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