第4回 人・形展

白黒イラスト素材【シルエットAC】
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書けるうちに消化。
『第4回 人・形展』
丸善 丸の内本店 ギャラリー
15日まで。…あ、今日か……

第4回 人・形展

気になった作品について…

林 美登利《白蟻姫》
昆虫の擬人化された人形。四本の腕があり、下半身は昆虫のそれのようであった。
球体関節人形は関節部分から節足動物、昆虫を連想させる。そのためか、違和感を感じさせない。
白いレースのドレスの裾から覗く淡いピンク色の昆虫の腹が可愛らしく、艶かしく思えた。
ドレスを着ているので、構造がどうなっているのか…
そんな事を想像したりもしたが、隠されてあるが故に感じるエロスがあった。
ブログ http://midori.cernit.pupu.jp/

宇野亜喜良《St Jordi》
イラストレーターとしての氏の作品を見てきたが、立体作品を初めて拝見した。
ガラスの眼では無い事が、他の人形と比べて異色のように思えた。その眼は氏のイラストそのままに。
白昼夢のような二次元世界の表現とは異なる印象を受けた。
立体の質量・物質感があるためかも知れない。
古典絵画を連想させる重みのある塗り方。聖ジョルディ(聖ゲオルギウス)の竜退治の物語。
まさに絵画の立体版だった。
参考:『聖ゲオルギウスと「竜」    初期聖人伝説』
http://home.ix.netcom.com/~kiyoweap/myth/arms-weap/@st-george-martyrdom-encomia-j.htm
カタロニア的でもあるが…私はふとチェコの人形劇の人形を思い出した。

伽井丹彌《プシュケ(精霊)の系譜Ⅰ~Ⅲ》
指まで可動式にされている、等身大の球体関節人形3体。舌の上に乗る透明な球体は言霊の具現のようだった。
“3"という調和数が齎す印象が、神秘的に思える。
プシュケは直ぐに蝶、魂を連想させる。

『人形譚』http://www.tokachi.com/kai/

よねやまりゅう《神卯》《豚神》
日本神話を連想させる、獣頭人身の胸像。
2体の口からは金と銀の魄霊(言霊?)が現れる。
兎は日本神話でも始まり、導きを司る生き物として現れる。
では、豚はどうだろう?豚は猪に見えなくも無い。寧ろ猪を家畜化したものが豚なのだから、等しく見て良いのかも知れない。
そう考えたのは、この2つの胸像に“始まりと終わり”というキィワードを感じたからに他ならない。
猪…ふと思い出すのは十二支の最後の干支に当てられている事。しかし、「亥」は猪を指す訳ではないので、直接の関係は無い。
余談ではあるが、「亥」は“閉ざす”という意味。
参考:亥(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A5

猪は精神的権威を表すと同時に、<狩り>の対象であり、殺されたり世俗によって追い詰められる霊的なものの象徴でもある。
日本では勇気と無鉄砲の象徴でもある。
参考:Boar
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/boar.html
ここで思い出されるのは、『もののけ姫』の乙事主、『まんが日本昔ばなし』で紹介されていた『さだ六とシロ』である。

http://www.mbs.jp/mukashi/2006_01.html
どちらも山神、あるいは霊的存在であり、人間によって狩られる。終わる。
死、あるいは新しいものが来る前の終焉の象徴のように思えたのだ。

脱線しまくったので、話を戻します。
球体関節人形の群像の中で、異色のものが。
それは面。
お2人、そういった作風のものを出展していた。可動性のヒトガタというよりは、オブジェとしての要素が強くなるが…
似て非なるものと言うものか。
人を模したものである事には変わり無い。

中嶋清八
遠目から能面のように見え、ふいに惹き込まれて近づいてみると、その生々しい描写に驚かされる。
硬派な印象の能面とは異なり、質感が生の肌に近いように思われた。
鉛筆画も展示されていた。

仮面を付けた人間。
その仮面は表情を隠すものではなく、表情を代弁していた。
2人の人間が並ぶ構図は静かであるが故か、何か事件の前触れのような緊張感があった。
ブログ http://53435481.at.webry.info/

青野明彦
コラージュのオブジェのようだった。そのためか、非常に意識させられた。能面のような中嶋清八氏とは異なる。
箱の中には何処か腐食したような、生成されているような…歪で有機的な曲線で輪郭を取る顔がある。

『AONO』http://www.k3.dion.ne.jp/~ombre.fr/

工芸的な人形展というよりは、アートに近いものが多数出展されていたように思えた。
以前感じていた、似たりよったりの作品という印象は今回は無く、各作家が独自性を出していたのでは無かろうか。

私には良い人形展でした。

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