映画『007 スカイフォール』感想

白黒イラスト素材【シルエットAC】
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公式サイト:
http://www.skyfall.jp/

最早、ダニエル・クレイグによる金髪のジェームズ・ボンドに抵抗は無くなった。
『007』シリーズ製作50周年記念作品である。

先代007ピアース・ブロスナンまでの頃に比べ、現実味が追及されるうになっていると思う。
先代にて語り尽くされたか、未来への羨望のようなハイテク機器を大袈裟に使わなくなった。

監督も過去にアカデミー賞受賞経験のあるサム・メンデスが勤めるという。今までの『007』とは矢張り異なるのだ。

まず、映像が洗練されている。1つ1つのシーンが絵画のように構図も安定し、光と影の描写も美しい。
テロに巻き込まれたMI6職員の棺が横たわる部屋の、白と黒に色調が抑えられた静謐の中で棺に掛けられたユニオン・フラッグの青と赤だけが鮮やかだ。
香港の幻燈と霧深いスコットランドの幽玄……メリハリのあるヴィジョンに感嘆してしまう。
これを何というのか?撮影技法には詳しくないので指し示す言葉を私が知らないことが悔やまれる……

この映画は娯楽という枠組みから逸脱させてあるようだ。
随所に原点回帰的な、『007』に留まらずイギリスの伝統と革新を垣間見る仕立てがされていた。

映像の中のユニオン・フラッグ、霧のスコットランド然り、香港はかつてのイギリス領である事など。
更にテニスンの詩『ユリシーズ』の引用からも伺える。

Though much is taken, much abides; and though
We are not now that strength which in old days
Moved earth and heaven; that which we are, we are;
One equal temper of heroic hearts,
Made weak by time and fate, but strong in will
To strive, to seek, to find, and not to yield.

Alfred,Lord Tennyson : Ulysses

たしかに多くが奪われたが残されたものも多い
昔日、大地と天を動かした我らの力強さは既にない
だが依然として我々は我々だ
我らの英雄的な心はひとつなのだ
時の流れと運命によって疲弊はすれど意志は今も強固だ
努力を惜しまず、探し求め、見つけ出し、決して挫けぬ意志は

諸々の会話にイギリスらしいユーモアが現れ、過去の『007』シリーズへのオマージュも見られた。

需給品開発課のQが「ペン型爆弾の方が良かったか?」という台詞。揶揄したものは『007 ゴールデン・アイ』(96′)に出てくる秘密兵器だ。

そういえば、今回の敵役、ラウル・シルヴァがMI6の元エージェントであるという設定も『ゴールデン・アイ』と同じだが、それは似て非なるものだ。
自分を売った祖国への憎悪と愛国心から、彼は自分の古巣(MI6)“そのもの”にテロを仕掛ける。
そこに昨今の銃乱射事件というテロの片鱗を見る。
2001年の911テロ以降、「テロとの戦い」は戦争に発展した訳だが、10年経って従軍及び帰還兵(白人)による銃乱射事件(テロ)が発生した。
ノルウェーの連続テロ……事件は脅威は肌の色の違い、異なる宗教の対立が原因ではない事を明確にしたのではないだろうか。
あの事を思い出さずにはいられない。
 
終わる時代と新しい未来。

テニスンの詩が象徴する強い意思が、悲劇を乗り越え、時に悪意の抑止力となる事を切に願う。

『007』も時代と共にどんな変化をするのだろうか。

しかしダニエル・クレイグ…御歳44とは思えない素晴らしい肉体美…三度も上半身を脱いで披露していた。

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