愛のヴィクトリアン・ジュエリー展
非リアルタイム日記。
色々とアートを鑑賞する機会に恵まれた。少しずつ…書けたらいいな。
Bunkamuraザ・ミュージアムにて。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_victorian/index.html
21日まで。
ジュエリー、工芸の展覧会は(例え宝飾品でも)地味になりがちだと思っていた。
しかし、今回の展覧会は華やかで見応えのあるもののように思える。
『オルセー美術館展』のような会場の雰囲気づくりが成されていたためだと思う。
宝石の種類だけでなく、カット装飾の技法、主な職人の略歴、意匠の意味についてのキャプションが多く掛けられていた。
“読みごたえ”のある展覧会。
19世紀 ヴィクトリア女王の時代。
ファッションリーダーとして王族の権力の象徴であった宝飾品をファッションとして取り入れたのもヴィクトリア女王だという。
ウェディングでの指輪交換や純白のドレス、ライフスタイルではクリスマスツリーをイギリス、欧州文化に定着させたのは彼女がきっかけであるようだ。
その話を聞いて、ダイアナ妃の事を思い出す。
彼女もまた、セクシー系のウェディングドレスが主流になっていた頃に、彼女の婚礼の影響からプリンセススタイルのウェディングドレスが流行った。英国王室は国民に愛され、それ故に国民に影響があるのだとしみじみ思う。
話を戻そう。
今回の展覧会で宝飾品に特定の名前があるものは少ないので、ジュエリーの絵ハガキと、意匠の意味について書く。
《ターコイズ&ゴールドブローチ》
鳩と忘れな草。
鳩は古来より霊感の象徴、忘れな草の花言葉は「私を忘れないで」
《ハードストーンカメオ&エナメルペンダント》
古代ブームに則り作られた、神話モティーブのカメオ。
これ以外にもロマン主義との関わりを感じさせるそれらは多数あった。ヨーロッパの文化にギリシア・ローマの神々は欠かせない。
《シードパールティアラ》
花をモティーフにしたティアラ。勿論それには意味がある。
薔薇(ROSEはイングランド、アザミ(THISTLE)はスコットランド、シロツメクサ(SHAMROCK)はアイルランドの国花。
大英帝国を表している――それらが女王の頭上を飾る。
テグスで飾られたそれは動くとゆらゆらと揺れるように出来ている。
会場では小さく揺らすように表現されていた。
《リガードマルティーズクロスブローチ》
リガードとはREGARD(敬意)、マルティーズクロスは“防衛/名誉”を象徴。髪の毛を入れるロケットになっている。
故人を忘れぬようにしたモーニング・ジュエリー(Mourning Jewelry)
会場を巡り思う事は、そのジュエリーに込められた“想い”の強さだ。
キャプションを読んで、イメージが膨らんだのかも知れない。
敬意、情愛、哀悼――
それらが伝わってくる気がした。
それらの集大成とも言えるヘア・ジュエリー。
遺髪を封じ込めた宝飾品。これを見たかった。
髪というものは古来より思い入れ深い。ヴィクトリアン・スタイルと同時期に起こったアール・ヌーヴォーでも女の髪は象徴的だ。
髪を編み込み模様にしたものや、木の意匠にしたものまで。
故人への想いが強まる。
金、真珠、金剛石、カメオ――
“大英帝国”の植民地の恩恵であるそれら宝石から七宝、更には最新技術であった鉄工を加工して作られた装飾品、本物の昆虫を“宝石”にした珍しいものまで。
植民地での発掘から始まる古代趣味の影響(エジプトなど)のあるもの。
その造形・意匠に感嘆し、かつての英国のヴィクトリアンスタイルへの憧れ、そして故人への想いを馳せた。