ロバート・メイプルソープflowers 写真展
池袋・西武ギャラリーにて。
https://www2.seibu.jp/wsc/010/N000054669/1540/info_d_pv
~2013/2/14まで。
知人の日記を拝見して、これはと思い、後れ馳せながら見に行った。
以前、ワタリウム美術館での展覧会にも展示されていた写真家だ。
『歴史の天使 アイ・ラブ・アート10 写真展』
ロバート・メイプルソープ(1946~1989)
ニューヨーク州ロングアイランドに生まれる。
1963年、ブルックリンに近プラットインスティテュートでドローイングやペインティング、彫刻を学ぶ。1970年代後半にはSMの作品に興味を持つようになり、その作品は大変ショッキングな内容ながら写真技術の卓越さが顕著に現れたものとなった。1980年代を通して、様式化された構図のヌード、繊細な花の静物画、アーティストや有名人のポートレートなどを撮り続けた。Art Print Japanポストカードより。
生き生きとした花の写真を撮る方は多いが、萎れかけた花の、死に瀕した命を昇華して撮る人は少ないだろう。
しかも、そこに官能がある。
会場入ってすぐに展示されている"Tulips 1987″
写真集の表紙になっている、痛みはじめ湾曲したチューリップ。
浅い花瓶から横に広がるように弧を描く構図は華道にも通じるのではないだろうか?
Mapplethorpe: The Complete Flowers
“Orchid 1982"
首のある花瓶には蘭の花の部分だけが挿してある。
花を顔に見立てると、そのフォルムはまるで人のようだった。
光が印象的だった――
病室の窓辺の光を思い出させる。
隔絶された弱々しい身体と清潔感を保つ消毒薬の匂い、そこに唯一入ってくる外の活力ある陽の光り。
少し離れた所にカラー版もあった。
薄い黄緑の壁は何処か安堵するような、癒しの空間のようだった。
モダンな、洗練されたシンプルな構図。
“flower 1985"
“flower with Knigh 1985"
この2枚の作品、ナイフがチューリップの花弁にキスするような構図に危険な香りがする。
“Tulips 1988"
これが今回、私が一番惹かれた作品だった。
チューリップの花弁は艶かしく、丸みのあるフォルムは女性的に感じた。
花弁にうっすらと走る葉脈は白い肌に浮かび上がる血管のようで、そこに接吻したくなる。
花弁の付け根のシンメトリーはヴァギナを彷彿させられた。
モダンな花の写真として見る事はできなかった。
これも以前書いたか、死を介して花と人が結び付く。
『花―死―人』
それがおそらく写真家の生涯に起因するのは容易な想像だ。
死の苦悩は同時に生/性の讃歌であり、写真にはまるで花言葉のように故人の想いが込められていた。
入場料が大人500円という手頃な価格で、充実した内容だと思う。
良い展覧会だった。