バイロス蔵書票展

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:美術鑑賞
バイロス蔵書票展

終わってしまった展示会ではあるのだが…
銀座 ヴァニラ画廊にて。
http://www.vanilla-gallery.com/

立て続けにこうした蔵書票を見る事ができて嬉しい。

この画家の事は知っていたが、意識して作品を見る機会が無かった。

フランツ・フォン・バイロスFranz Von Bayros (1866-1924)
クロアチア・ザクレブ生まれ。1
0歳の時に半裸のジプシー女性を見て以来、女性の身体の美しさを描くことに魅せられ、ドイツのミュンヘンやウィーンの美術学校で学び、1896年に作曲家ヨハン・シュトラウス2世の娘と結婚したが、翌年には離婚している。
その後、ミュンヘンのクニッル美術学校に入学、1904年に初の本格的な個展を開き、さし絵画家として活躍。1911年に刊行した画集「化粧台物語」がミュンヘン警察により、猥せつ罪で告訴され、公判を避けるためウィーンへ戻り、1921年に「神曲」をテーマに60枚の水彩画を発表し、ドイツやイタリアでの展覧会で「挿絵王」の称号を捧げられた。1924年に脳いっ血のため亡くなった。

私は美以外の何者も探し求めた事はなく最も非難される――そして最も頻繁に遂行される好意を美とともに描くことに務めてきただけである―〈中略〉―私は敢えて公言し「最後の審判」の日が来るまで主張し続けるであろう。私は美以外の何者にも仕えたことはなかったと。

フランツ・フォン・バイロス「私の道徳観」より

彼の蔵書票集【MappeⅠ】に収録されているものの展示。

ロココ・バロック調の装飾に当時の流行であるアール・ヌーヴォーを思わせる意匠の数々。
世紀末美術特有のファム・ファタルの系譜が表れる。
猥雑ではない、洗練された女性美。
孔雀、スフィンクスや牧神をはじめとするギリシア神話の神々など。教養の深さを感じさせる。
中にはペンギンを描いたものまで。万博の影響だろうか。女性が側に添うようにいるペンギンの構図は珍しく思う。

画家の耽美主義が凝縮された絵の数々。

その緻密な描写に圧倒される。
それ故に技法は銅版画かと思ったが、何だか印象が異なる。そうしたものではない印刷物のような。
疑問に思い、キュレーター伺った所、“ヘリオグラビュール”と呼ばれる写真製版によるものだという。

◆フォトグラビュール(ヘリオグラビュール)
写真製版を用いた腐蝕銅版画の一種。暖かいしっとりした感じの特徴があります。
ヘリオは「太陽」の意味で、「光」の意味のフォトと同様、制作した図版フィルムに光を当てて版を露光させて製版するのが特徴。

アートギャラリー町の入口より引用

今は使われていない技術で、その工程はよく判っていないそうだ。
銅板、ペン、水彩を使ったことは判っているようだが…?
金銭面でかなり値のはる技法だったらしい。

蔵書票が掲載されていたので、参考までに。
Bayros Room
http://www5e.biglobe.ne.jp/~exlibris/page023.html
連想美術館/フランツ・フォン・バイロス
http://sol.oops.jp/illustration/bayros.shtml

この画家について調べると、ダンテ『神曲』の挿絵も描いていた。
水彩で描かれたそれは透明感がある印象――
いつか現物を見てみたい。

さて、このバイロス、日本においても画集が刊行されたが、発禁本となっている。
『ユリイカ』特集:禁断のエロティシズム(92年12月)によると、書店でこの画集を購入した神奈川県在住の人物が性器がむき出しに描かれていることに腹を立て、神奈川県警に訴えたことが発端だという。

そんな俗っぽい要素があるようには見受けられなんだが。
100年以上経ってアートとなった春画もあるが…
ただ見るものの欲情煽るだけのポルノか、それ以上のものが込められたアートか。
ヌードや性器描写があると起こるこの対立、駆け引きはいつの時代も続く。

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