チューリッヒ美術館展

白黒イラスト素材【シルエットAC】
JUGEMテーマ:展覧会

チューリッヒ美術館展
公式サイト:
http://zurich2014-15.jp/

六本木・国立新美術館にて。
~2014.12.15まで。

近代~シュルレアリスムまで美術史をダイジェストで見れる展覧会。
“圧巻!すべてが代表作”という言葉通り、著名な画家たちの代表作を一堂に見れる。
充実した内容だった。

全体を通して思うことは、美術史の流れ「せめぎ合い」がわかる展覧会だった。

「色か、形か」
「現実か、理想か」

それらの対立と論争が、新たな価値観を時に生み出し、時に見直され、懐古する。

展覧会の見どころの一つである、モネの《睡蓮》の大作も素晴らしい。
晩年特有の、茶色くくすんだ影の下に見える極彩色。
赤い夕日、青い水、睡蓮の葉の緑、そして反射する陽の光。
すべての作品に感想が持てる。

下記、好きな作品の感想をしたためる。

ジョヴァンニ・セガンティーニ《虚栄(ヴァニタス)》
ジョヴァンニ・セガンティーニ《虚栄(ヴァニタス)
無垢な女性が沐浴をしようとしているが、岩陰の水面には悪の化身としての龍が顔を覗かせている。
“死と乙女”の主題にも通じそうな美醜の対比と、若さのという生の一瞬を意識させる。
点描画のような細かい色の線で描かれた像が幻想的だ。印象派風でありながら、スイスの澄んだ空気を思い出させる情景だった。
フェルディナンド・ホドラー《真実、第二ヴァージョン》
フェルディナンド・ホドラー《真実、第二ヴァージョン
シンメトリーな構図に神々しささえ感じる。
女の白い肌と男たちの褐色の肌、
男たちのモダンダンスのように構えた姿、黒い布を顔に被った姿が象徴的だ。
安定した構図に安心感を覚える。
フェリックス・ヴァロットン《トランプで一人遊びをする裸婦》
フェリックス・ヴァロットン《トランプで一人遊びをする裸婦
青い背景に赤いクッションと裸婦の肌色が映える。静謐な中の官能美。
陰影はそこまで深くなく、女性の曲線美、造形を意識させる。そのエロティシズム。
他にもう1枚の絵は、影とのコントラストが強く、男女の密会、駆け引きのようでスキャンダラスな緊張感がある。

三菱一号館美術館の『ヴァロットン展』に行きそびれてしまったので、これを見れただけでも嬉しかった。
シュルレアリスムの画家たちの作品が沢山拝見出来たことも感無量。
彼らはこの対立をハイブリッドしたのだろうか?

ジョルジョ・デ・キリコ《
深い青の空と、強烈なライティングで浮かび上がる白い柱。陽は見えず、時間の感覚を失った空間。
ピサの斜塔を思い出す形状だがそうではない。
そこに人はいない。
既視感と白昼夢の世界はどこか緊張感を漂わせる。

サルバドール・ダリ《バラの頭の女
局部強調(この場合は“手”)されたパーツによって創られた女の姿。
頭部がバラの花束でできており、とても豪華な女性性を感じる。その佇まいはオートクチュールに身を包んだファッションモデルといった風貌だ。
手前の女性はデザイン画を見ながら、何か思案しているようだ。
このバラ頭の女性と手前の女性の関係をどう捉えるかが面白いと思った。服とデザイナーなのか、理想の自分なのか……
額装も彼がデザインしたもののようだ。ラピスラズリの原石を思わせるフレームに黒い装飾枠が施され、絵にふさわしく豪華な印象を与えた。

マックス・エルンスト《都市の全景
前景の倒れた草木の上に建つように思える都市は城壁に囲まれている。
螺旋状に盛り上がる構造体はピーテル・ブリューゲル(父)《バベルの塔》を彷彿させる。
しかし私は映画『ラビリンス 魔王の迷宮』を思い出した。インスパイアされたのだろうか?

ミロの作品群は、黙示録的な世界観と戦争の悲愴に観ていて胸が熱くなる。
ミロが描く人の目を持つ動物は、人智を超えたもののような、神秘さを持っている。

他にも、テキスタイルにもなったモンドリアン、クレーの天使以外の作品など……
大満足の展覧会だった。

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