オルセー美術館展
世田谷美術館にて。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
以前現地のオルセーに行ったことがあるので、懐かしんで…
オルセーが収集している、19~20世紀初頭「アール・ヌーヴォー」の工芸の展覧会。
個々の作品についても色々と感想があるが、まず全体から。
展示の仕方は19世紀の生活習慣のようだった。
美術館は当時の“ブルジョワジー、鑑賞者は“サロンに招かれた客人”
として館内を巡る仕立てになっていた。次第にそれがプライベートな生活空間、ライフスタイルへと繋がっていくような仕立てである。
章立ては以下。
1.サロン、2.ダイニング・ルーム、3.書斎、4.エクトル・ギマール、5.貴婦人の部屋、6.サラ・ベルナール、7.パリの高級産業
2.ダイニング・ルームに展示させていた緑色の椅子5脚のステージは、以前オルセーで見たものだった。
綺麗な緑色に統一された空間にあるそれらは、独特の雰囲気を放っている。誰もが憧れる仕立てだろう。
壁に鉄工建築物の版画が掛けられていた。それはその時代を象徴するものだ。
エクトール・ギマールの作品は重要。
ナポレオン三世の都市計画の一環で地下鉄公団から駅の設計を担当したギマール。今も残るアール・ヌーヴォーデザインのモンマルトル・アベス駅のアーチを作った。
最先端技術であった鉄工の加工技術で有機的なモティーフに仕上げた。
エクトール・ギマール《天井灯》
宣伝にも使われている。
小さめではあるが、有機的なデザインと豪奢さがある。
参考:エクトール・ギマール
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/040515.htm
5.貴婦人の部屋は女性の心ときめく空間である。化粧用具、扇子や簪と言った服飾品が展示され、女性を魅了していた。
会場にはゲラン社のルール・ブルーが香っていた。カーネーション、ネロリの入った、華やかさと同時に優しさを感じさせる香りは心地好い。
http://guerlain.co.jp/fragrance/lheurebleue/index.html
ジョルジュ・バスタール《扇子“孔雀”》
螺鈿に施された孔雀の姿。その美しいシンメトリックさと孔雀の尾羽の色彩の表現をしているように思える。
クレマン・マシエ《大皿》
ラスター彩と呼ばれる技法で作られた植物文様の大皿は、その玉虫色の鮮やかさが象徴主義的な雰囲気を生み出していた。
ラスター彩(ラスターさい、Lusterware)とは、焼成した白い錫の鉛釉の上に、銅や銀などの酸化物で文様を描いて、低火度還元焔焼成で、金彩に似た輝きをもつ、9世紀-14世紀のイスラム陶器の一種。ラスター(luster)とは、落ち着いた輝きという意味。
中国建窯の、曜変・油滴・禾目などの天目茶碗は、この影響を受けて作られ、ラスター現象が見られる。
象徴主義的モティーフに溢れたこの小櫃。知恵の象徴である女神アテネの梟、真理の象徴であるサラマンドラと無知の象徴である蛇の戦い。
極彩色の七宝に彩られていた。
ライフスタイルの提案のような印象も受けた。
環境問題が叫ばれる現在は、当時そのままでは無いだろうか。鉄工が主流になりつつあり、自然が失われてゆく時代に、自然――有機的な描写を鉄鋼の中に取り入れた。そして生活の中に自然のモティーフもまた多く取り入れたれたアール・ヌーヴォー。
そのスタイルに憧れるものがある。